「注意欠陥多動性障害について」
以下に注意欠陥多動性障害を理解するため、関連用語の説明をしておきます。
学習障害とは;
まずこの概念がいつ頃にできて、どういう内容なのかについて調べてみました。以下は福島県立医科大学神経精神科講師・星野仁彦先生、福島県精神保健センター所長・八島裕子先生、福島県立医科大学名誉教授・熊代永先生による御著書『学習障害・MBAの臨床』(新興医学出版社、平成4年4月)からの引用です。
1)脳損傷児(brain injured child);
1947年、Strauss という人が「多動、不器用、行動の学習の障害」によって特徴づけられる子供の脳障害をはじめて提唱しました。
2)微細脳損傷(minimal brain damage);
1959年、Pasamanick という人が上記のような子供の脳障害を「妊娠中あるいは出産前後に起こった脳の微細損傷による障害で、知能は正常であるもの」としました。
3)微細脳機能障害(minimal brain dysfunction);
1962〜63年、英国と米国でこのような表現になりました。1968年、日本小児科学会で、これがシンポジウムで取り上げられました。
4)学習障害(learning disability);
1963年、Kirk という人が「治療教育に方向性を与える用語」として提唱し、1968年、Myklebustという人が「行動上の問題があり、基本的には神経学的な原因による学習能力の障害」と定義しました。(精神遅滞ではない。感覚器官の障害ではない。情緒障害ではない。運動障害ではない。)
5)1973年、Peters という人が次のように学習障害をタイプ分けをしました。
不器用、共同運動障害
○混合型
○純粋学習障害型……左右障害、書字障害、読字障害、算数障害
6)1980年、米国の診断基準 (DSM-V) の中で小児精神障害は次の五つに分類されました。
7)1977年 WHOの国際疾病分類第9版 (ICD-9)、1989年 第10版で、微細脳機能障害、注意欠陥多動性障害に相当する概念として、「多動症候群」が定義されました。それは以下のようなものです。
「注意の持続の短いことと注意の散りやすさを基本的な特徴とする障害である。幼児期にもっとも著明な症状は、抑制のない、統合と制御が不良な過度の多動性であるが、これは青年期には、寡動性に置き換えられることがある。衝動性、著しい気分の変動と攻撃性も、よく見られる症状である。特定の技能の発達の遅れがしばしば存在し、障害された乏しい対人関係がよく見られる。(ICD―9)」(ただし、広汎性発達障害、躁病、鬱病、または不安性障害の診断基準に適合しないこと。6才未満の発症、最適6ヶ月の持続、IQが50以上。)
宮千代加藤内科医院(仙台市)のホームページ