「私はなぜ飲酒問題に関心を持ったか?」

  

 アルコール依存症への偏見

 私が初めて重症のアルコール依存症の患者さんを診た時、私はこの病気に対して偏見を持ってしまいました。無茶なことを平気でし、大声を出し、暴力をちらつかせる。それが病気とは思えませんでした。その患者さんの性格の問題だと思いました。
 今思うと、見かけの裏にある本当の心理や、酒に対する抑えきれない欲求、それらへの理解を中途半端にして、私は短気を起こし、患者を見限りました。そしてその患者さんは亡くなりました。私には、二度とアルコール依存症は扱いたくないという気持ちが残りました。

 診療所を開院して知ったアルコール関連障害の多さ

 診療所を開いた時、ヒマだったこともあって、来院する患者さんに、タバコはどのくらい吸うのか、酒はどのくらい飲むのかを必ず聞くようにしていました。私の予想を超えて、多くの患者さんたちが毎日のように酒を飲んでいることを知りました。
 肝臓障害や糖尿病、高脂質血症、痛風などがあって、酒を飲み続けている患者さんが多くて、それらの人々が短期間飲酒を止めただけで、検査データが改善していくことから、これらが「アルコール関連疾患」であることも知りました。中には、γ−GTPが300単位を超えていたり、指がふるえている患者さんたちもいました。しかしそれらの人々は、決して乱暴でも、不道徳でもなく、どちらかというと、まじめすぎるほど働いている中年男性が多かったのです。

 ネクタイアル中を知る

 たまたま酒浸りで誰がみてもアルコール依存症とわかるような患者さんがいて、その患者さんを入院させるためアルコール依存症の専門病院へ行きました。そこの精神科の先生に「うちの医院には、アルコール関連疾患が多く、中には指がふるえているような患者さんも結構多いんですが、私のイメージではとてもアル中とは考えられないのですが‥‥」というような話をしたところ、「それは現代のアル中、つまりネクタイアル中というのだ」と言われ、ハッとしました。その言葉がアルコール依存症の問題に私が関わるきっかけとなりました。

  

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