女性の高コレステロール血症の薬剤治療に根拠はない


1.薬害オンブズパースン会議・タイアップ仙台では、平成13年10月、病院に勤務する内科医157人にコレステロール低下剤に関するアンケート調査を行った。回収率は約12%と低かったが、回答した医師には、日本動脈硬化学会の基準値(220mg/dl)は低すぎ、改正すべきだという意見が多かった。

2.血液中に脂質が増え、死亡や重い病気が起きるなら高い脂質状態は高脂質血症と言える。そのうち主要なものが高コレステロール血症である。学会の基準値は虚血性心疾患の発生率を問題にしたもので、寿命や癌との関係は問題にしていない。大阪府立成人病センターによる八尾市住民約1万人(40〜79歳)の追跡調査、日本循環器管理研究協議会の全国300ヶ所約1万人の追跡調査によれば、前者の調査で、男性ではコレステロ−ル値が240〜279mg/dlで死亡リスクが最も低く、癌死亡とは逆の関連があり、女性では200〜279mg/dlで死亡リスクが低かった。後者の調査で、男性高齢者では220mg/dl以上でコレステロール値が高いほど死亡率が低く、女性高齢者では240〜259mg/dlで死亡率が最も低かった。福井市における健診受診者約2万6千人の追跡調査でも、男性ではコレステロール値が低いほど有意に死亡率が高く、女性では120mg/dl以下の低コレステロール群で死亡率が低かった。このように日本人の血清コレステロール値は、現基準での高値よりも、むしろ正常値や低値の方が寿命に対して危険因子となっている。

3.コレステロール低下剤による治療の有効性の根拠は、虚血性心疾患の既往歴がある白人中年男性での再発予防効果の報告であり、既往歴のない白人中年男性への発症予防効果は2論文、うち寿命延長効果は1論文で証明されたにすぎない。日本人の心筋梗塞死亡率は米英白人男性の約1/5で、しかも日本人女性のは日本人男性のさらに1/5と非常に低い。日本人女性の高コレステロール血症の薬剤による治療には科学的根拠がなく、莫大な医療費の無駄と考えられる。平成13年8月、コレステロール低下剤であるスタチン類の一つ、セリバスタチンが横紋筋融解症の多発によって販売中止となった。既存のスタチン類よりもさらに強力にコレステロールを下げる薬剤には副作用がより多く発生する懸念がある。

 ※ 2002年12月2日東京都アルカディア市ヶ谷において行われた消費者フォーラムの分科会において発表した内容要旨。フォーラム全体で610人の参加者がありました。






表2 患者カテゴリー別管理目標値
表2 患者カテゴリー別管理目標値
TC:総コレステロール、LDL-C:LDLコレステロール、
HDL-C:HDLコレステロール、TG:トリグリセリド
 
* 冠動脈疾患とは、確定診断された心筋梗塞、狭心症とする。
** LDL-C以外の主要冠危険因子

     加齢(男性≧45歳、女性≧55歳)、高血圧、糖尿病(耐糖能異常を含む)、喫煙、

     冠動脈疾患の家族歴、低HDL-C血症(<40mg/dL)

 
原則としてLDL-C値で評価し、TC値は参考値とする。
脂質管理はまずライフスタイルの改善から始める。
脳梗塞、閉塞性動脈硬化症の合併はB4扱いとする。
糖尿病があれば他に危険因子がなくともB3とする。
家族性高コレステロール血症は別に考慮する。

 

図5 脂質の分布(J-LIT)

図6 日本人のコレステロール値と死亡の危険(J-LIT)

図7 日本人のコレステロール値と死亡の危険(総死亡、大阪・八尾市、内藤ら)

図8 日本人のコレステロール値と死亡の危険(総死亡、NIPPON 研究、上島ら)

図9 日本人のコレステロール値と死亡の危険(循環器病死亡、大阪・八尾市、内藤ら)

図10 日本人のコレステロール値と死亡の危険(がん死亡、大阪・八尾市、内藤ら)

図11 総コレステロール値と死因(J-LIT)

図12 総コレステロール値と死因(J-LIT)

 

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