フッ化物(F)の急性中毒量について


 現在、虫歯予防のためにフッ化物を応用する学者・歯科医らの推進派グループは、フッ化物の急性毒性(急性中毒量)はフッ素(F)にしてヒトの体重当たり2mg/kg としています。
 
 この急性中毒量は、現在全国的に普及が推進されている「フッ化物洗口」などに際して、子供たちが洗口液を誤飲してしまう危険性があることから、問題になります。この急性中毒量=2mg/kg 説について取り上げます。

 急性中毒量=2mgF/kg説について
 
 「フッ化物応用と健康─う蝕予防効果と安全性─」1)(以下「フッ化物応用と健康」)には以下の記述があります。

 かなり古い報告になるが Baldwin (1899) 14)はフッ化ナトリウムを適宜自ら服用し,症状の出現をチェックした.それによると,90mg で唾液分泌の増加,250mg 服用の際は2分後に悪心がみられ,20分で症状が最も強くなったとしている.このことからフッ素の急性中毒量は 2mg/kg と推定される(飯塚,1972)15)としている.
 これらの報告等から推察して,フッ素の経口摂取による軽度ないし中程度症状を伴う急性中毒の発現量は,フッ素にして 1〜5mg/kg 体重とみなして差し支えない.
 
14) Baldwin, H.B.:J. Am. Chem. Soc., 21:517, 1899.
15) 飯塚喜一:口腔衛生学,244,永末書店,東京,1972.

 この「急性中毒量=2mgF/kg」説のよりどころとなった Baldwin の論文の関連部分は日本フッ素研究会の村上徹先生2)、秋庭賢司先生3)が和訳されています。

 極少量(NaF)で僅かに悪心と流涎が起こった.0.03グラムとパン少量を飲み込んだが症状はなかった.0.09グラム摂取1時間後は,少量の流涎以外何も症状はなかった.しかしながら,2日後,空腹時に0.25グラム内服すると,2分以内に悪心を起こした.そして徐々に激しくなり,20分後に最高に達した.多量の流涎,吐気はあるが,嘔吐はなかった.悪心は次第に収まり,美味しくはないが昼食はとれたが,すぐ嘔吐した.内服後丁度2時間後であった.翌日まで僅かな悪心はあったが,2日後には消退した.

 「フッ化物応用と健康」ではこの Baldwin の報告をもとに「フッ素の急性中毒量は 2mg/kg と推定される(飯塚,1972)」と飯塚喜一先生がその著書「口腔衛生学」4)において 2mg/kg と推定したかの記述があります。そこで、飯塚喜一先生の上記「口腔衛生学」4)を見ると、以下の記述があります。

2)Fの毒性
 
(1)急性毒性 acute toxicity
 
 無機の中性F化合物の毒性に限ってのべることとする.急性中毒は,あやまって大量のFを飲食物などに添加したばあいに限っておこるものである.

表49 NaF服用による自覚症状(Baldwin)
 
服用量(g) 自覚症状
0.03 ナシ
1時間後に0.09 わずかの流涎(salivation)
2日後に 0.25(空腹時) 2分以内に悪心(nausea)→20分で最高.唾液流出著し.悪心は翌日わずかに残るが,2日目には消失.(服用2時間後に食事をしても嘔吐起こらず.)

 Baldwin36)は自ら種々な量の NaF をのんでみて表49に示すような症状を観察している.これから見ると,急性中毒症状発現域は,だいたい NaF で 0.25g ぐらいと考えられるが,これはちょうどF塗布溶液である2% NaF 液 12.5ml にあたる.

 この飯塚先生の上記部分からは、飯塚先生が「フッ素の急性中毒量は 2mg/kg と推定される」と明確に述べたということは認められません。Baldwin が自らフッ化物を飲用して観察した事例から「急性中毒症状発現域は,だいたい NaF で 0.25g ぐらいと考えられる」としているだけで、普遍性を持つ、体重当たりの換算値として「2mg/kg」を推定した訳ではありません。

 このような文献引用によってフッ素の急性中毒量が 2mg/kg と推定される、としている文献は、例えば最近のものでは「フッ化物応用の手引き─フルオライドA to Z─」(社団法人東京都歯科医師会編集)5)があります。

(34ページ)
 
(1)急性中毒発現量
 
 Baldwin 30)は、自ら様々な量のフッ化ナトリウム(NaF)を飲んでみて、NaF で 0.25g(250mg) で急性中毒症状が発現することを示しています。したがって、成人の場合の急性中毒発現量は NaF として 250mg (Fとして 112.5mg) であり、体重1kg 当たりフッ素として約2mg ということになります31)
 
30) Baldwin, H.B.:J. Am. Chem. Soc., 21:517, 1899.
31) 飯塚喜一:口腔衛生学,244,永末書店,東京,1972.

 Baldwinは論文中に自身の体重を記しておらず、体重1kgあたりの中毒量を算定するためのデータはそもそも存在しません。ゆえにこの論文は急性中毒量を「2mgF/kg」としうる科学的な根拠を持ち得ません。基本的にこの論文は特定個人のデータであり、しかも前世紀の1899年以前のデータです。誰が最初に「2mgF/kg」説を唱えたかはともかく、この論文を根拠に導き出されたという「2mgF/kg」説には一般性は認められず、科学的な批判に耐えるものとはなりません。
 
 この論文によらずとも、それ以降に起こった様々なフッ素中毒事故などのデータや研究から、より信頼性のあるデータの収集は可能です。

 まず、松本歯科大学教授近藤武先生は著書「地域性歯牙フッ素症」((財)口腔保健協会,平成3年)6)において以下の如く考察されています。

※「第6章 実験的歯牙フッ素症」の「4.急性(1回)投与による影響」の「5)ヒトでの急性中毒」以下。(113〜114頁)
 
 ヒトでの NaF 内服については,森山ら16)が 22.5mgF 服用したところ,胃部圧重膨満感により,嘔吐してしまったとの報告がある.これより中毒量を求めると,服用者の体重を50kgとすると 0.45mgF/kg となる.実際の急性中毒の報告は15),1955年京都市で起きた事例で,小学生にむし歯予防のために給食に誤って多量の NaF を添加した中毒例である.主な中毒症状は,嘔吐で発症率は17.7%であった.これらの症状から,最小中毒量は 1.35〜1.80mgF/kg と推測されている21)
 しかし両者の間には,最小中毒量に大きな差があるので,笠原ら10)は NaF の飲用実験を行った.成人で 20mgF を内服したところ,上腹部膨満感を主とする不快症状が起こり,30分後に混合唾液量の増加がみられ,また,唾液粘度が一過性に上昇した.これらのことから,成人での NaF 内服による中毒の初期症状の発現は,0.3mgF/kg であるとした.一般には急性中毒最小量は 1.4〜1.8mgF/kg とされているが21),以上の実験の結果から,NaF による急性中毒発現量は0.1〜0.5mgF/kgとするのが妥当と考えられる.
 


 
10) 笠原 香,近藤 武:フッ化物摂取による唾液粘性の変化について.口衛会誌,38:480−481,1988.
15) 美濃口 玄,小野尊睦,高橋好子:集団的に学童に見られた急性弗素化ソーダ中毒症に関する観察.日口科誌,7:295−299,1958.
16) 森山徳長,黒須一夫:弗化物の経口投与が諸体液Ca量に及ぼす影響について.歯科学報,52:185−189,1952.
21) 日本口腔衛生学会フッ素研究部会編:フッ化物局所応用に関するガイドブック.17,口腔保健協会,東京,1985.

 また、秋庭賢司先生は広範な文献調査から「F(フッ素)の急性中毒量については,従来 2〜5 mg/kg,あるいは 8mg/kg といわれてきたが,米国の中毒事故報告例によると,推定 0.1〜0.8mg/kg で急性中毒が発生している.」とし、「その結果,従来より危険性が指摘されていた塗布(9000ppmF)同様に,洗口も急性中毒を起こす危険性があること,個人差,健康状態,栄養状態,子供の特殊性を考えると,Fによる集団洗口は中止すべきであり,関係諸機関に中毒量の見直しを求めるものである.」としています3)



 さて、ここで「急性中毒量=2mgF/kg」説に妥当性があるか否かを考えるための1つの例として、わが国で起こった中毒事故(事件)を取り上げたいと思います。

 昭和62年、新潟大学歯学部予防歯科学教室において同学部3年生70数名に対し「フッ素の急性毒性」と題する実習が行われました。二重盲検法によって2つのグループに分けられた学生の内、食塩水にフッ化ナトリウム(フッ素量18ミリグラム)を混入した溶液を飲んだ学生38名の内、26名の者に嘔吐、吐き気、腹痛、よだれ、顔色変化など種々の症状が発現し、ただの食塩水(偽薬)を飲んだ学生に比べ約2倍、症状の発現が認められました。
 
 この中毒事故は飲用拒否の自由を奪われた強制的な人体実験であるとして、新潟県弁護士会に人権救済の申し立てがなされました。
 
 この人権救済の申し立てに対して新潟県弁護士会・同人権擁護委員会は新潟大学予防歯科学教室の教授宛に「要望書」を出しました。この「要望書」には事故(事件)の詳細が記されていることから、「急性中毒量=2mgF/kg」説に妥当性があるかなどを考える資料として重要な価値があると考えられます。そこで、ここに新潟県弁護士会の承諾を得て、この「要望書」の全文を掲載します。なお、さらに前記教授には新潟県弁護士会・同人権擁護委員会から「警告書」も出されましたが、事故(事件)の内容、経過などを幅広く理解するために合わせてご参照いただければと思います。

※ 「要望書」及び「警告書」の掲載を許可して下さった新潟県弁護士会及び同人権擁護委員会に深く感謝を申し上げます。
 
※ なお、本件を取り上げた新潟弁護士会の2つの文書には学生に見られた諸症状についての教室側の反論もあることから、全文を掲載します。 




登場人物
 
 下記「要望書」及び「警告書」中の固有名詞については、現時点では取りあえず、殆どを匿名といたします。

A,D  新潟大学歯学部
E,F,G,H  守門村(行政)
I,J,K  氏は「要望書」における申立人で、氏(歯科医師)は「警告書」における申立人です。



 

要 望 書

 申立人 I 外371名に係る昭和63年2月26日付(同月同日受理)人権侵害救済申立について,当弁護士会は,当会人権擁護委員会に回付して慎重に調査検討した結果,左記のとおり要望する.

平成2年1月29日


新潟県弁護士会 会 長 原   和 弘

同人権擁護委員会 委員長 高 島 民 雄

新潟大学歯学部予防歯科学教室
教 授   殿


要  望

 新潟大学歯学部予防歯科学教室が,昭和62年7月,同学部3年生を対象に,2回にわたり実施した「フッ素の急性毒性」と題する選択テーマ実習は,被検者たる学生の一部に吐き気腹痛等の生理的機能障害を及ぼし,その人権を侵害したものと認められるので,同実習存続の是非,並びに,これを継続される場合には,その実施方法について,学生に飲用拒否の自由を保障する等その人権に配慮し,慎重に検討されるよう,要望する.

理  由

第一 申立の趣旨
 
 本申立の趣旨は,新潟大学歯学部予防歯科学教室(教授 A )が昭和62年7月,2回にわたり同学部3年生70数名に対し実施した「フッ素の急性毒性」に関する二重盲検法テスト(以下,本テストという)は,左記の事実から,学生らが拒否の自由を奪われた強制的な人体実験であるから,これを直ちに中止するとともに,ふたたびかかる違法行為を行わないよう同学部に対し,厳しく警告されたいというにある.


(1)  本テストは,二重盲検法により学生を2つのグループに分け,1つのグループには食塩水にフッ化ナトリウム(フッ素量として18ミリグラム)を混入したものを,他のグループには食塩水だけのものを,それぞれコップ様容器に入れ各々に飲ませたものであるが,18ミリグラムというのは,昭和52年に松本歯科大学で同趣旨のテストが実施された際に,急性中毒の発現をみたフッ素量10ミリグラムの2倍近い危険な量であり,現に第1回目の飲用では,フッ素混入液を飲んだ学生の内,55.3パーセントが吐き気(内3名は吐いた),18.9パーセントが腹痛を訴えるなど全体で68.42パーセントの学生に何らかの不快症状が発現している.
(2)  昭和62年1月西山町二田小学校において,児童のフッ素洗口によると疑われる急性中毒事件が発生したが,本テストのフッ素18ミリグラムの飲用量は,子供と大人の体重差(約2倍)を考慮すると,現在新潟県内の小中学校で実施されているフッ素洗口の週1回法,洗口液の全量誤飲量に相当する.
(3)  本テストは,授業の一環として実施されており,学生が参加を拒否することは,授業のボイコットを意味する.学生が参加を拒否することは事実上不可能であった.

第二 当会の判断

1 判断に供した資料

J からの聴取結果
K からの聴取結果
新大歯学部予防歯科学教室関係者(小林清吾助教授外3名)からの聴取結果
学V選択テーマ演習「フッ素の急性毒性」と題する書面(昭和62年度),同結果レポート
「フッ素の急性毒性」と題する書面(昭和61年度)
口腔衛生学会雑誌(第27巻第3号)
にいがた交流誌 耕カルチャー(1986年)
意見書(和光大学 高橋晄正)
「フッ化物局所応用に関するガイドブック」(財団法人口腔保健協会)
新潟日報の誤報記事と事実経過について(通知)(新潟県環境保健部長,新潟県教育委員会教育長)
「う蝕予防プログラムのためのフッ化物応用に対する見解」(日本口腔衛生学会,研究部会,フッ素委員会)
「フッ素の急性中毒量の出典リスト」と題する書面
学生便覧(昭和63年度)
「人権救済申立に対する見解」(新潟大学歯学部長 D 
第112回国会衆議院文教委員会議事録(抄)
予防歯科学実習一覧(新潟大学歯学部予防歯科学教室)
「中毒の理解と中毒学の実践」と題する文書
「フッ素洗口液の体験実習レポートについて」と題する書面
「学V実習」と題する文書(昭和60〜62年度)
「アメリカ合衆国こおける最近の歯科事情」と題する文書

2 事実の認定
 
 当会人権擁護委員会が,前記資料などにもとづき調査したところによれば,本件に関し以下の事実が認められる.

(本テスト実施の概要等)
1. 新潟大学歯学部予防歯科学教室(以下,単に教室という.)は,かねて新潟県内における児童のう蝕予防のためのフッ素洗口の普及を積極的に推進して来ているが,歯学教育の一環として,昭和55年度より本テストと同様のフッ素飲用実習をカリキュラムに加えて,毎年度これを実施して来た.
2. 新大歯学部は,2年間の教養過程を終えた後,3年目から専門課程となる.昭和62年度3年生は78名である.歯学部の授業は,基礎と臨床に分けられ,予防歯科学は臨床系に属する.本テストは,3年生の2期目(6月中旬から9月末)に設けられた予防歯科学教室の実習の中の選択テーマ実習のうちの1つである(他の3つは,スライドによる斑状歯診断,フッ化物洗口法の効果判定,フッ化物洗口法・フッ素塗布の口腔内残留量).
3. 昭和62年度の予防歯科学教室の実習は,7月1日の医局長から学生に対する内容説明で開始されたが,その際本テストに関して配布されたメモによれば,本テストは「フッ素の急性毒性」と題され,同メモには,目的として,「ヒトのフッ素の急性毒性について,盲検法により実験する.」,検討事項の1つとして,「フッ化ナトリウムの急性中毒量」等の記載がある.
4. 飲用被検者は,準備やデータ整理の担当者以外の75名全員とされ,右説明に際し,過去のテストのデータに関する説明はなく,又,飲用を拒否し得る旨の告知はなされていない.
5. 溶液は,偽薬(食塩水)と,これに18ミリグラムのフッ素を含む溶液の2種類であり,フッ素量18ミリグラムの飲用は,子供と大人の体重差を考慮すると,現在県内で実施されているフッ素洗口週1回法の洗口液の全量誤飲に相当する.
6. 本テストの実施計画は,学生によって立案されたものであるが,正確を期するため,飲用は2回とし,被検者75名は,飲用類型別に4班に分けられ(2回ともフッ素,1回目のみフッ素,2回目のみフッ素,2回とも偽薬),飲用による症状の申告は,学生自身の判断による自己申告とされた(判定項目は,予め急性フッ素中毒の症状を参考にして選定され,申告用紙に記載されていた.なお,急性中毒と無関係な判定項目も設けられている.).飲んだ溶液がいずれであったかは,飲用者には知らされない.
7. テストは,7月8日,9日の2回行われたが,1回目に多数の被検者に後記の不快症状が発現したこと等から,2回目には,溶液を飲まない者が多く,申告内容に正確さの保障はなく,2回目のテストは,実質的には不成立に終わった.
 
(本テストの結果)
1. 1回目のテストの結果は,フッ素混入液を飲用した38名のうち,吐き気の55.3パーセントを中心に,腹痛,よだれ,顔色変化など種々の症状が申告され,結局68.42パーセントにあたる26名の者が,何らかの症状を訴えた.
2. 他方,偽薬を飲用した37名の中からも14名の者(37.84パーセント)が,吐き気を中心に,種々の症状を申告した.
3. 右結果等について,学生は,「Fの摂取による不快症状の代表的なものは,吐き気であると言えるのではなかろうか.」「有意差が認められたことから,特に,小学生の児童に洗口液を誤飲させることは避けたほうが良いことが示唆される.」などとレポートしている.
4. 2回目のテストは,担当者が一応データを整理しているものの,前記のとおり,その結果に信頼性はない.
5. なお,前記のとおり,教室では,昭和55年度から,本件と同様のテストを実施して来ているが,過去のテストの結果も右1回目のテスト結果とほほ同様のレベルの反応が認められてきた.
 
(飲用拒否の申出と教室の対応)
1. 1回目のテストに先立ち,2名の学生から「フッ素を飲むのはこわい」「大学外の人から体に悪いと聞いた」などの理由で.本テストには参加したくないとの申し出が教室側になされた.
2. これに対し教室側は,本テストの安全性について説明をし,両名にテストに参加するよう説得した.その結果1名は参加することに翻意したが,もう1名はテストの目的等について十分な説明がないこと等から,これに納得せず,不参加の態度を変えなかった.
3. そこで,教室側は,右学生に対して,フッ素の安全性についての理解が足りないとして,溶液飲用に代えて,フッ素に関する毒性とう蝕予防に関するレポートの作成提出を命じた(当該学生は,テスト当日,係の学生に請われて飲用に応じ,レポートは提出していない).
 
(その他の関連事実)
1. 松本歯科大学で,昭和52年,微量フッ化物の内服による不快症状が調査されたが(プラシーボは用いず),同レポートは,「フッ素の最少中毒量は不快症状からするとFで1キログラム当たり,0.1〜0.2ミリグラムと考えられる.」としていること.
2. 昭和62年1月,柏崎地区労から柏崎保健所に対し,「フッ素洗口を実施している西山町二田小学枚で,体の異常を訴えた児童がいる.原因や実態を調査してほしい.」との要請がなされたこと,これについて,県と県教育委員会は,「児童の症状をフッ素洗口と関連づけることはできない.」との調査結果を公表したこと.

3 判   断
 
 右認定事実等をもとに,本テストが学生らの人権侵害に該当するか否かを判断することとなるが,その際考慮すべき主要なポイントは,飲用に供された本件フッ素量ならびに学生らに発現した種々の身体的影響についての人権侵害の程度に関する評価,本テストの目的とその相当性の有無,本テスト実施方法の適否,これら3点と思われる.以下に,順次検討の結果を述べる.

1.生理的機能障害と人権侵害
 
 本テストの結果,多数の学生に前認定の吐き気,腹痛などの諸症状が発現している.これらは,明らかな人体の生理的機能の障害である.
 当弁護士会は,まず,このような結果をもたらす行為は,その目的方法等においてこれを正当とすべき特段の事情のない限り,原則として人権侵害行為であり許されないものと考える.そして,その結果がフッ素の飲用によりもたらされたか(因果関係),単なる心理的精神的影響によりもたらされたか(偽薬)の区別も,人権擁護の観点からは,格別の意味を持たないものと考える.即ち,使用されたフッ素量18ミリグラムの毒性の有無に拘らず,生じた結果は基本的にこれを容認し得ないのである.
 加えて,使用されたフッ素量18ミリグラムの毒性の疑いも否定し切れない.教室側は,急性中毒発現体重1キログラム当たり2ミリグラムは歯科医学界では確立した知見であり,その7分の1である本件フッ素量で問題となる不快症状は発現しないとし,本テストの結果の諸症状は,いずれも精神的心理的な不安感によるもので,偽薬との症状発現の差異についても,自己申告という症状の判定方法の問題等データの客観性にそもそも疑問があること,学生の中にフッ素混入液を識別できた者が相当数いたことなどを理由に,その因果関係を否定する.しかしながら,前認定のとおり,松本歯科大学の報告では,フッ素10ミリグラムの飲用で不快症状が認められたとされていること又フッ素とプラシーボ両群間の症状発現の差異は2倍に近いことなどを考えると,教室側の主張するデータの客観性の欠如等の事情を十分考慮に入れたとしても,なお本件フッ素と症状との間の因果関係もこれを否定することは出来ないように思われる.本テストは,使用されたフッ素量の面でも問題があると言わなければならない.
 しかしながら他方において,本テストでは,プラシーボ飲用者の38パーセントにもほぼ同様な症状が認められ,フッ素飲用者の発現諸症状にも精神的心理的側面が相当程度作用していることも疑いなく,又,学生らのかかるフッ素の飲用も,生涯この機会のみにとどまると思われるものである.こうしたことからすれば,かかる飲用テストも,全く是認の余地のないものとまでは言い難く,その目的に合理性があり,かつその実施の過程方法において十分な人権上の配慮がなされる限りは,なおこれが許容されることもあり得るものと考えるのが相当である.そこで以下,かかる特段の事情の有無について検討する.

2.本テストの目的
 
 申立人らは,本テストの目的は,児童がフッ素洗口液を誤飲した場合の急性中毒症状に関する人体実験にあると主張する.そして,教室の説明資料には「フッ素の急性毒性について実験する」「フッ化ナトリウムの急性中毒量」等の記載があり,本テストを選択した学生も,そのレポートで「フッ素の摂取による不快症状」に言及していること,又,前記のとおり本件フッ素の毒性にも疑いが残ることなど,これに添う資料もないわけではない.しかし,当弁護士会は,これら資料から,本テストをフッ素の急性中毒量に関する実験と断定することには,躊躇せざるを得ない.少なくとも教室関係者らは,フッ素の急性中毒の発現量は体重1キログラム当たり2ミリグラムであること,そして,本件飲用フッ素量18ミリグラムの安全性に関して,ほぼ絶対の確信を有していると思われることに加えて,本テストの計画実行はほとんど学生らの自主的判断に委ねられ,発現症状把握の客観性を担保する手当もないなど,本テストは,これがフッ素中毒量に関する科学的学術的データの取得を目的としたものと考えるには,余りにも杜撰であり,又,教室側がそのテスト結果に何らかの関心を払っていたという形跡も全く窺うことが出来ないからである.
 他方,教室は,本テストの目的を洗口液誤飲の場合の安全性についての理解を深めるための体験と,二重盲検法プラシーボ効果等の習得にあるものとし,その教育目的をもって,本テストの正当性を主張する.
 しかしながら,この主張についても,その効果と前記の発現諸症状を勘案するとき,その目的から直ちに本テストの実施を正当化することは出来ないというのが,当弁護士会の結論である.
 まず,実験計画法等の習得であるが,テーマ選択者はともかく,飲用するだけの被験者に,本テストはほとんど学習的意味はもたないはずであるし,そもそもそうした学習のための素材がフッ素飲用でなければならない理由はこれを見出し難い.
 そして,飲用体験について,教室は,歯学部の卒業生は,社会に出た場合歯科医師としてフッ素利用の指導的立場を求められるので,洗口液誤飲等の場合の安全性について,自ら飲用体験していることの意味は大きいとして,その意義を強調するのであるが,その前提自体必ずしも自明とは言い難いし,又,直接の飲用体験が,一般的にはその種の理解に有益であり得るとしても,それが前記の如き生理的機能障害などの負の結果を伴う場合には,単に有益であることそれだけで,これを正当化することは到底出来ないものと考えるからである.
 その結果が予め明らかな以上は,その実施にあたっては,不利益を蒙る恐れのある被検者の人権に対する慎重な配慮が必要なものと言うべきである.
 なお,本テストが,果たして教室の主張する安全性の理解に適うものかどうかの疑問もある.即ち,学生らは,フッ素を飲んだかどうか知らされないのであるし,又,多数の学生に発現した吐き気腹痛等の生理的機能障害の結果が,洗口液誤飲の場合の安全性の理解に有益であるとは容易には考えにくいからである.そして,もしも教室が,本件に見られるような結果をもってなお,これが学生らの安全性の理解に資するものと考えてきたのだとすれば(毎年ほぼ同様の結果でありながら,本テストは反復継続されて来た),洗口液誤飲の場合の安全性に関する教室の認識そのものが問われることともなるであろう.

3.実施方法の適否
 
 前記のとおり,学生らに生じた生理的機能障害の結果は,人権擁護の観点からこれを看過し難いものであるし,又学生らが必ずしもフッ素飲用を受容しているものでないことも,偽薬による不快症状の発現,2回目の飲用ボイコットなどで明らかである.
 こうした被検者学生の人権に対する配慮がここでの問題である.この点について,当弁護士会は,本件の如きテストの実施にあたっては,被侵害者たる学生らに,被検者となるかならないかの選択の自由が保障されていることが,その人権侵害性の除去ないし治癒を考える上で必要不可欠なものと考える.飲用体験志願のボランティアとすることが望ましいが,少なくとも参加の拒否が認められ,そのことに対して何らの不利益扱いもなされないことが保障されなければならない.そして又,自由な選択を可能ならしめるには,過去のテストデータの開示等受認すべき不利益に関する十分な判断材料が提供されなければならないであろう(仮にそのために本テスト実施の意義が没却されるとしても,それはやむを得ないものと考える).
 しかるに,本テスト実施の経緯をみると,全員参加が当然の前提とされ,教室側から学生に対して,予想し得る諸症状に関して,事前の説明はなされていないし,もとより参加を拒否し得ることの告知はない.却って教室側は,フッ素飲用の不安から不参加を申し出た学生に対して,飲用を説得するなどし,なおも翻意しない学生1名に対しては,飲用に代わるレポートの作成提出を,あたかも制裁の如くに命じている.
 こうした教室側の対応をみる限り,そこに生理的機能障害を蒙ることあるべき学生らの人権に対する配慮は見出せず,本テストにおいて,学生らに,飲用の諾否の自由が保障されていたとは到底言い難い.

第三 結   び
 
 以上検討したところにより,その目的方法においても,これを正当として容認すべき特段の事情は見出せず,当弁護士会は,本テストは学生らの人権を不当に侵害したものと結論せざるを得ない.そして,そうである以上,かような実習を従前通りの方法で継続することは,人権擁護の観点から,これを容認し難いものと言わなければならない.
 その目的,方法を再吟味するとともに,なお実施される場合には,被検者学生の人権に対して,前記のような配慮が不可欠なものと当弁護士会は思料する.
 但し,ことは大学における具体的な教育内容に直接関わる事柄である.大学の自治の理念に照らし,本件の如き問題は,学生を含む民主的な討議を経て,大学内において自主的に解決の筋道が見出されることが最も望ましい.
 当弁蔑士会は,このような観点に立ち,本テストを人権侵害と認めつつも,事件処理としては,これを頭書のとおり「要望」(新潟県弁護士会人権擁護委員会規則第11条第8号)にとどめ,大学の自主的努力による本問題の解決に期待することとしたものである.

 

 


 

 

 

警 告 書

平成4年3月5日


新潟県弁護士会 会 長 平 沢 啓 吉

同人権擁護委員会 委員長 中 村 周 而

新潟大学歯学部予防歯科学教室
教 授   A  殿


主  文

 貴殿が、昭和63年6月1日付と平成2年11月6日付の2回にわたって、別紙1および記載の各文書を新潟県北魚沼郡守門村村長に送付した行為は、申立人の学問の自由を侵害する人権侵害行為に該当すると認められるので、強く反省を求め、今後、申立人に対して学問の自由を侵害するような行為を厳に慎まれるよう警告する.

理  由

第1 申立の概要

1  申立人は昭和56年から新潟県北魚沼郡守門村に同村医療センターの歯科医師として勤務している.この間、申立人は新潟県が実施しているフッ素の集団洗口などの有効性・安全性に学問上の疑問を持ち、市民団体・消費者団体の人々と共にフッ素洗口などの危険・中止を訴える研究発表や講演などを行ってきた。また申立人は、新潟大学歯学部予防歯科学教室(以下、教室という)が学生を使って実施していたフッ素飲用実験を学生に対する違法な人権侵害行為とみなし、他の有志と共に昭和63年2月、当弁護士会に対して人権救済申立てを行った.当弁獲士会はその申立てを認容し、平成2年1月、教室に対して要望を行った。
2  教室は、昭和63年6月、申立人が第8回フッ素研究会で、「新潟からの報告──新潟大学歯学部予防歯科におけるフッ素洗口人体実験の経過報告」と題する報告を行うという情報に接し、同年6月1日付で守門村村長に対し、「善処してほしい」旨の別紙1記載の文書を送付し、さらに同村幹部に同趣旨の電話をかけるなどして、同村長に対して申立人の報告を中止させるよう圧力をかけた。
 申立人は、同年6月4日朝、守門村役場の村長室で、当時の F 助役から、「フッ素は県も推進している。報告が行われると守門村がフッ素に反対していると受け取られかねない。県と村の関係がうまくいかなくなると村としても困る。できれば今回の学会での報告を取りやめてほしい。せめて守門村医療センターの肩書は使わないでほしい。」と強く要請された。そのため申立人はやむなく要請を受け入れ、前記研究会では一歯科医師として報告を行った。またフッ素研究会への参加は従前の出張扱いを拒否されたため、自弁で参加した。
3  さらに教室は、平成2年11月、申立人が第11回フッ素研究会で再び教室の前記実験について報告するとの情報に接し、同年11月6日付で守門村村長に対し、「貴村職員による発表につきましては、その内容の適切さについていささかの懸念を持っておりますので善処していただきたい」旨の別紙2記載の文書を送付し、また同日、教室の小林清吾助教授は同村長に対して申立人の報告の中止を求める電話をかけた。申立人は、同月7日朝、守門村役場の村長室で、 F 村長から、「フッ素研究会での報告をやめてほしい。また守門村医療センターの肩書は使わないでほしい.」と厳しく叱責され、フッ素研究会での当初の報告を断念せざるを得ない状況に追い込まれた。
4  よって、教室が昭和63年6月1日付平成2年11月6日付で、それぞれ守門村村長に対して前記文書を送付し、または電話をかけて申立人の学会での発表を中止させるように圧力をかけた行為は、申立人の学問の自由、表現の自由、歯科医師としての良心の自由を侵害するものであるから、教室に対して今後再びこのような違法行為を行わないよう貴弁護士会において厳しく警告するよう求める。

第2 調査の概要

1 申立人から提出された資料
   (1) 昭和63年6月1日付の教室から守門村村長に対する文書(同月2日守門村受付)

(2) 平成2年11月6日付の教室から守門村村長に対する文書(同月8日守門村受付)

(3) 守門村作成の出張簿

(4) 申立人作成の平成2年11月14日付の G 守門村助役からの聞き取り書

(5) 申立人作成の平成2年12月7日付の F 守門村村長からの聞き取り書

(6) フッ素研究会発行の「フッ素研究第11号」(平成2年11月発行)

(7) 食生活普及会発行の「消費者センターだより198号」(平成3年2月25日発行)

(8) 申立人が翻訳したアメリカでのフッ素訴訟に関する訴状

(9) 申立人作成の平成3年8月20日付の当委員会に対する上申書ならびに添付資料
 
2 教室から提出された資料

(1) J 氏の活動に関する資料」と題する書面

(2) 教室作成の平成3年10月8日付の申入書

(3) 平成2年11月18日開催の第11回日本フッ素研究会総会プログラム

(4) 昭和63年7月17日開催の第8回フッ素研究会プログラム
 
3 当委員会の事情聴取の結果

(1) 平成3年1月25日に実施した申立人からの事情聴取に関する報告書

(2) 平成3年2月23日に実施した F 守門村村長からの事情聴取に関する報告書

(3) 平成3年4月18日に実施した教室所属の小林清吾助教授ならぴに安藤雄一助手からの事情聴取に関する報告書

(4) 平成3年7月31日に実施した申立人からの事情聴取に関する報告書

(5) 守門村村長作成の昭和63年6月18日付の教室に対する文書

(6) なお、当委員会は教室の A 教授に対して事情聴取のために2度にわたって文書により面会を求めたが、同教授から面会を拒否された。

第3 認定した事実

1 申立人と守門村の雇用関係
   (1)  申立人は、昭和48年3月、新潟大学歯学部を卒業し、同歯学部の紹介で昭和56年4月から新潟県北魚沼郡守門村に同村医療センターの歯科医師として勤務し、現在に至っている。申立人が守門村に就職する際、同村との間には、@日曜、祝日のほかに、金曜日、土曜日を勤務を要しない日とする、A研究会などへの出張旅費は村が負担する、という勤務条件が存在していた。

(2)  申立人は、フッ素の集団洗口などの有効性・安全性についての学問的な疑問を持ち、守門村に勤務するかたわら、フッ素洗口などの危険性やその中止を訴える研究発表や講演を行っていた。これに関連して守門村は、昭和61年5月、京ヶ瀬村から、「よその村の職員が京ヶ瀬村に来て、京ヶ瀬村で行うフッ素洗口に反対するのはおかしい」という旨の抗議を受けたが、守門村医療センターの H 課長は、「それは J 氏が個人としてやっていることで、守門村としてやっていることではない」旨回答し、とくに申立人に対して注意することはなかった。さらに守門村は、申立人が行った前記内容の講演に関連して、昭和62年4月にも広神村から同様の抗義を受けたが、前記 H 課長は京ヶ瀬村に対して行ったと同様の回答をした。

(3)  その後、申立人が行った前記内容の講演に関連して県内の他町村からも同様の抗議が守門村に寄せられたが、その際申立人は守門村の F 助役から、「個人として行動するのは自由だが、守門村の肩書で行動されると村長の責任になるからやめてほしい」旨注意された。
 
2 「フッ素飲用実習」に関する人権救済申立事件

(1)  申立人は、昭和63年2月26日、I ほか370名とともに、教室が学生に対して実施した「フッ素飲用実習」が学生に対する違法な人権侵害であるとして、当弁護士会に人権救済の申立てを行った(以下、「フッ素飲用実習」に関する人権救済申立事件という)。

(2)  当弁護士会は、平成2年1月29日、教室に対して、「新潟大学歯学部予防歯科学教室が、昭和62年7月、同学部3年生を対象に、2回にわたり実施した「フッ素の急性毒性」と題する選択テーマ実習は、被験者たる学生の一部に吐き気腹痛等の生理的機能障害を及ぼし、その人権を侵害したと認められるので、同実習存続の是非、並びに、これを継続させる場合には、その実施方法について、学生に飲用拒否の自由を保障する等その人権に配慮し、慎重に検討されるよう、要望する」旨の要望を行っている。
 
3 新潟大学歯学部と守門村の社会的関係

(1)  教室を中心とする新潟大学歯学部は、昭和49年3月、新潟県歯科医師会などと共に子どものむし歯対策を具体的に進める運動として「子供の歯を守る会」を発足させ、県内各地の保育園、幼稚園、小学校などで講演会などの啓蒙宣伝活動を行い、フッ素洗口の推進運動を強力に推進してきた。新潟県北魚沼郡では昭和49年に前記「守る会」北魚沼支部が結成され、現在では守門村を除く全町村でフッ素洗口が実施されている。また、新潟県衛生部(当時)は、昭和50年に「フッ素洗口事業補助金交付要綱」を定めて県費助成を開始し、さらに同年、新潟県教育委員会は「フッ素洗口法によるむし歯予防について(通知)」を出すなどフッ素洗口を学校現場で積極的に推進している。

(2)  教室を含む新潟大学歯学部は、同歯学部出身の歯科医師を新潟県内の無歯科医師村に常勤、非常勤の形で紹介もしくは派遣し、地方無歯科医師村の歯科医師の確保に大きな影響力を持っている。ちなみに申立人が守門村医療センターに勤務するようになったのは、新潟大学歯学部の紹介によるものであり、守門村は金曜日と土曜日も、申立人以外の歯科医師を同歯学部から派遣してもらっている。

(3)  申立人が勤務する守門村医療センターは、毎年、国や新潟県から多額の補助金を受けている。しかし、守門村は、申立人がフッ素決口について否定的な見解を有しているため、北魚沼郡内で唯一フッ素洗口を実施していない。これについて F 村長は、教室を中心とする新潟大学歯学部や新潟県が推進しているフッ素洗口について村が反対しているという誤解を受けると、医師を派遣してもらったり、福祉関係の補助事業をする際に不利になるという危惧感を抱いていた。
 
4 教室の昭和63年6月1日付の文書と守門村の対応

(1)  申立人は、昭和63年7月17日に群馬県高崎市で開催される予定の第8回フッ素研究会で、「新潟からの報告──新渇大学歯学部予防歯科におけるフッ素洗口人体実験事件の経過報告」と題する報告を行う予定でいたが、教室は事前にこれを知り、教室の A 教授の名前で守門村村長に対し、昭和63年6月1日付の別紙1記載の文書を送付し、守門村は、同月2日、同文書の送付を受けた。しかし、報告に関連して教室から申立人に対して連絡が取られた形跡はない。

(2)  同文書には、申立人が前記フッ素研究会で予定していた報告の内容について、「貴村の J 氏は、・・・本実習を“人体実験”としておりますが、これは当教室の名誉を著しく損ねるものであるばかりか、学生教育に対する不当な干渉行為であると考えております。かかる大学教育の自治権に関する侵害行為とも言うべき行為が、貴村の職員を通じて行われようとしていることは、大学教育に責任ある立場の者として、誠に遺憾に思う次第であり、善処をお願いする次第です。」と記載されている。

(3)  申立人は、同年6月4日朝、守門村役場の村長室で、当時の F 助役から教室より送付された前記文書と第8回フッ素研究会のプログラムを示され、「大学や県は村の指導機関だから、それらのやっていることに反対するようなことを村の肩書を使ってやられては困る。大学が推進していることに村の肩書を使って反対するようなことは許せない。今回の研究会の出席を取りやめてほしい。それがだめなら、守門村医療センターの肩書を使用しないでほしい。」旨要請され、さらに「これは職務命令であり、これに違反した場合は処分の対象になる」旨注意された。

(4)  守門村は、教室に対して「当教室学生実習に関する貴村医療センター職員の行動について(回答)」と題する昭和63年6月18日付文書を送付した。これによれば、守門村は、同年6月4日、申立人に対して、@守門村職員としての勤務姿勢について、Aフッ素研究会は、歯科学関係の学会として認めない、従って公務としての出張等はない、B村外において計画されている事業、行事に参加する際、上司の許可を得ること、C今後守門村及び守門村医療センターの名称を使用することなく、歯科医師 J として行うことなどの事項について「厳重に注意」し「指導」したとしている。

(5)  申立人は、第8回フッ素研究会には出席したが、同研究会の主催者に要請してプログラムに印刷されていた申立人の「新潟県守門村医療センター」の肩書を削除してもらい、前記報告を行った。

(6)  守門村は、申立人を職員として採用した際の勤務条件の定めに従い、それまで申立人がフッ素研究会に参加する際は出張扱いにしていたが、その後、守門村は申立人が同研究会へ参加する際に出張扱いとすることを拒否したため、申立人は第8回のフッ素研究会には自費で参加した。
 
5 教室の平成2年11月6日付の文書と守門村の対応

(1)  申立人は、平成2年11月18日に新潟市で開催される予定の第11回フッ素研究会で、「新潟大学歯学部予防歯科学教室のフッ素飲用学生実習に関する新潟県弁護士会および同人権擁護委員会の『要望書』について」と題する報告を行う予定でいたが、教室は事前にこれを知り、同年11月上旬頃、同教室の小林清吾助教授は守門村に「 J がまた発表する。守門村医療センターの名前を使っている。」旨電話をした。その際、守門村の G 助役は、「村長にも伝えなければならないので、大学側の見解を公的な文書にして送付してほしい」と要請したところ、同教室は、守門村村長に対して、平成2年11月6日付の別紙2記載の文書を送付し、守門村は、同月8日、同文書の送付を受けた。しかし、報告に関連して教室から申立人に対して連絡が取られた形跡はない。

(2)  同文書には、当弁護士会が教室に行った「フッ素飲用実習」に関する前記要望について、「この要望書は、調査を行った学生がたった1名であるなど調査そのものが不備であったり、調査事実の誤認や医学的および教育的に誤った判断が随所にみられる極めて杜撰なものでした。・・・当教室といたしましても、県弁護士会からの要望書は当教室の名誉および信用を著しく棄損し、かつ大学教育に対する甚だしい干渉行為であるとして、本年2月16日付で県弁護士会に対し抗議文書を提出しております。そして、この抗議文書に対する県弁護士会からの回答は一切ありませんでした。」として教室の見解を述べた後、「しかしながら、このたび貴村職員による発表につきましては、その内容の適切さについていささかの懸念を持っておりますので、善処していただきたくお願い申し上げる次第です。」と記載されている。

(3)  申立人は、守門村が文書の送付を受けて間もなく、守門村役場の村長室で、 F 村長から、「肩書を使わないと約束したのに、約束違反だからフッ素研究会での発表をやめてもらう」旨言われた。申立人は、フッ素研究会に報告する内容については論文にまとめて事前に主催者に提出してあり、論文では守門村医療センターの肩書を使用しなかったこと、同研究会のプログラムにも申立人の肩書を入れないよう事前に主催者に申入れをしていたが、主催者の手違いで肩書が付されていたこと、さらにプログラムに肩書が印刷されていたことは F 村長に指摘されるまで気づかないでいたことなどの釈明をしたが、 F 村長は「肩書を人集めのために、わざと入れたのではないか」、「あれだけ肩書を使うなと言っておいたのに使ったのだから、フッ素研究会での報告をやめてもらう」旨申立人に厳しく注意した。

(4)  そのため申立人は、第11回フッ素研究会には出席したが、報告をした場合、守門村から処分を受けることになることを危惧し、当初予定していた報告をしなかった。しかし、当日出席した会員の中から、「プログラムに載っているのに、どうして報告をしないのか」という質問が申立人に出されたため、申立人は会場で報告できなくなった経過のみを口頭で報告した。なお、同研究会には教室関係者も複数出席していた。

第4 判断

1 教室が守門村に送付した各文書の趣旨について
   (1)  申立人が昭和63年2月26日に申立てをした「フッ素飲用実習」に関する人権救済申立事件について、当弁護士会が、平成2年1月29日、教室に対して前記要望を行ったこと、教室が昭和63年6月1日付の別紙1記載の文書を守門村村長あてに送付したことにより、申立人は同村長から注意を受け、第8回フッ素研究会では主催者に頼んでプログラムに印刷されている申立人の「新潟県守門村医療センター」の肩書を削除してもらい報告を行ったこと、さらに教室が平成2年11月6日付の別紙2記載の文書を守門村村長に送付したことにより、申立人は同村長から第11回フッ素研究会での報告をやめるよう注意され、報告を行った場合には守門村から処分を受けることを危惧し、同研究会で予定していた報告をとりやめたことは前述したとおりである。

(2)  教室が守門村に送付した別紙1およぴ記載の各文書は、申立人が当弁護士会に前記人権救済の申立てをした後の昭和63年6月1日付と、当弁護士会が教室に前記の要望を行った後の平成2年11月6日付の2回にわたり、いずれも守門村村長宛に発送されており、各文書には、「善処をお願いする」または「善処していただきたくお願い申し上げる次第です。」という記載がある。
 すなわち、昭和63年6月1日付の文書には、申立人がフッ素研究会で予定していた報告内容が、「当教室の名誉を著しく損ねるものであるばかりか、大学教育に対する不当な干渉行為」であり、「かかる大学教育の自治権に関する侵害行為とも言うべき行為が、貴村の職員を通じて行われようとしていることは、大学教育に責任ある立場の者として、誠に遺憾に思う次第であり、善処をお願いする次第です。」と記載されている。
 また、平成2年11月6日付の文書は、申立人が同研究会で予定していた報告の「内容の適切さについていささかの懸念を持っておりますので、善処していただきたくお願い申し上げる次第です。」と記載されている。

(3)  このように教室が守門村村長に送付した各文書には、教室が守門村に対して具体的にどのような「善処」を要請するのかについては明記されていないが、各文書の記載内容を一読すれば、いずれも申立人が前記各フッ素研究会で予定していた「フッ素飲用実習」に関する人権救済申立事件についての報告内容が教室に対する批判的内容を含むものであることを教室が予測し、その報告内容について教室として反対の見解を表明すると共に、申立人の雇用者である守門村が申立人に対して各報告を行うことについて「善処」するよう求めていることは明らかである。

(4)  ところで教室は、新潟大学歯学部が、教室を含む同学部出身の歯科医師を、守門村をはじめとする県内の無歯科医師村に常勤、非常勤の形で派遣するなど地方無歯科医師村の歯科医師の確保に大きな社会的影響力を持っていることを当然認識していたと解される。また、守門村としては、当時、教室を中心とする新潟大学歯学部や新潟県が推進しているフッ素洗口について村が反対しているという誤解を受けた場合、医師を派遣してもらったり福祉関係の補助事業をする際に不利になるという危惧感を抱いており、教室の昭和63年6月1日付文書に対して、同月18日付文書をもって申立人に「厳重に注意」し「指導」した旨の回答書を送付し、その後、申立人がフッ素研究会に参加する際は、申立人との間で出張扱いにする旨の勤務条件が存在したにもかかわらず、出張扱いとすることを拒否するようになったことは前述したとおりである。

(5)  このような守門村と教室を含む新潟大学歯学部との社会的関係、前記人権救済申立事件の経緯、前記各文書が守門村村長に送付された時期、各文書の送付を受けて実際に守門村村長が申立人にフッ素研究会に出席しないよう求めたり、報告を中止するよう注意したこと、さらにフッ素研究会への出席について出張扱いを拒否したことなど守門村が申立人に取った対応などに照らして、教室が各文書で守門村村長に要望している「善処」の趣旨を検討してみると、教室は、申立人のフッ素研究会での各報告が、教室に対する批判的内容を含むものであることを予測し、申立人の各報告を事前に抑止するため、教室を含む新潟大学歯学部と守門村との間に存在する前記社会的関係を背景にして、教室が守門村に前記各文書で「善処」を要望すれば、守門村が申立人との雇用関係を通じて申立人の報告を事前に中止させることがあり得ることを認容し、かつそれを意図して守門村村長に送付したものと解するのが相当である。
 
2 教室の反論に対する判斬

(1)  教室の小林清吾助教授らは、当委員会が平成3年4月18日に実施した事情聴取において前記各文書で「善処」をお願いするとした趣旨は、単に肩書使用の中止のみを求めていたに過ぎず、「教室としては、申立人がフッ素研究会において報告することを止めて欲しかったが、教室から守門村に対してそのように指示することも憚られたので、申立人が守門村の了解を得て、守門村もそのようなことを承知して同村の職員が発表するなら仕方がないとの考えに基づき、同村に対してその点を確認するために書面を送付した」旨主張した。
 ところが、その後教室が当委員会に提出した平成3年10月8日付申入書によれば、前記事情聴取の際の主張を変更し、「J 氏が守門村医療センターの肩書を使ったのは一つは自らの権威づけであり、更に、大学(当教室)と守門村の間の信頼関係を失わせる目的があるのではないか」と考え、「当教室は守門村当局の立場を考慮してその事実を通知したもの」で、「善処」という言葉は「一考していただきたい」という趣旨であり、「肩書を使うなということを申出ているものでは」ないと弁明している。
 しかし、事情聴取の際の主張と申入書に記載された弁明の趣旨は前後矛盾して一貫性を欠くものである。また教室が守門村に送付した前記各文書は肩書使用の問題には一切触れておらず、各文書の具体的文言から教室の主張や弁明を読み取ることは困難である。よって、教室の弁明や主張は到底措信できない。

(2)  そもそも研究報告者が学会などで研究成果を報告する際に使用する肩書は、単に当該報告者の所属を明らかにするために使用するのが一般であり、肩書を使用するか否かは報告者の自主的判断に委ねられているのが通常である。申立人が前記各研究会で予定していた報告内容は、その表題に鑑みれば申立人の私的な研究成果の報告であることは教室として守門村に問い合わせるまでもなく一見して明らかであり、さらに教室は、守門村が昭和63年6月18日付で教室に送付した回答書からしても、各報告が申立人の私的な報告であると認識していたことは明らかである。しかも、申立人が「守門村医療センター」の肩書を用いて私的研究に関する前記報告を行ったとしても、申立人が教室と守門村の信頼関係を失わせるとは到底認められず、また申立人がそのような目的を有していたとも考えられない。

(3)  なお、教室は守門村に送付した昭和63年6月1日付文書で、申立人のフッ素研究会での報告内容が、「教室の名著を著しく損ねるものであるばかりか、大学教育に対する不当な干渉行為である」旨述べているが、報告内容はフッ素の人体に対する安全性についての申立人の学問的研究成果に立脚したものであり、教室の名誉を損ねるものであるとは解されず、大学教育に対する不当な干渉であるとも認められない。
 仮に、申立人の報告内容が教室の名誉を棄損するものと考えたとしても、申立人の雇用者である守門村に対して申立人の報告を中止させることを意図した文書を送付した教室の行為は、正当化されるものではない。
 
3 教室の申立人に対する人権侵害

(1)  ところで憲法23条の保障する学問の自由は、学問的研究の自由とその研究結果の発表の自由とを含み、大学における教授その他の研究者はもちろん広く何人にも保障されるものである。学問の自由が保障されるのは、それが外部からの干渉を排除して自由であることによってのみ真理の探求が可能となり、そのことが国の文化と国民生活の向上に不可欠の要件であるという学問の必要性と重要性にもとづくものであるから、単なる個人的価値にとどまらず、社会的、国家的にも最大の尊重を払わなければならない価値というべきである。
 したがって、私人が学問的研究成果を研究会や学会等で発表することに対して、私人の雇用者が雇用関係を通じて報告を事前に中止させたり、国(国立大学の大学関係者を含む。)が、雇用者との社会的関係を利用して雇用者に対して私人の研究会や学会での報告を中止させるよう求めることは、原則として憲法23条に保障された学問の自由を侵害する人権侵害行為に該当すると解すべきである。

(2)  教室が、「新潟大学歯学部予防歯学教室・教授 A 」の名前で、昭和63年6月1日付と平成2年11月6日付の2度にわたって申立人の雇用者である守門村の村長に別紙1および記載の各文書を送付した行為は、教室を含む新潟大学歯学部と守門村の社会的関係を利用して、それが前記研究会で自らの研究成果や体験を発表することを、申立人の雇用者である守門村を通じて中止させることを認容し、かつそれを意図してなされたものと解されるから、申立人の学問の自由を侵害する行為というべきである。

(3)  なお、申立人は本件人権救済申立事件において守門村を被申立人としていないが、フッ素研究会の主催者側の手違いで、プログラムに申立人の肩書か印刷されたことを申立人が弁明しているにもかかわらず、前記研究会での申立人の報告を中止させた守門村の行為は、同村が村民に対する福祉行政を維持増進させる見地から、新潟大学(教室)との関係を悪化させたくないという状況に置かれていたことを考慮しても、極めて遺憾である。

第5 結論
 
 以上のとおり、教室が、昭和63年6月1日付と平成2年11月6日付の2回にわたって、別紙1および記載の各文書を新潟県北魚沼郡守門村村長に送付した行為は、申立人の学問の自由を侵害する人権侵害行為に該当すると認められるので、主文のとおり教室に対して強く反省を求め、今後、申立人に対する学問の自由を侵害するような行為を厳に慎まれるよう警告する。




 
【別紙1】
 

昭和63年6月1日
守門村村長
     E 殿
新潟大学歯学部予防歯料学教室
教授  A     

──当教室学生実習に関する貴村医療センター職員の行動について──

 初夏の候、貴殿におかれましては益々御清栄のこととお慶び申し上げます。平素より歯科保健につきましては、御理解をいただき感謝いたしております。
 さて、このたび、私どもは、貴村医療センターの J 氏が、当教室が行っている学生実習を“人体実験”として報告を行うとの情報を入手いたしましたので、一言申し上げたく存じます。
 当教室では、小児の虫歯予防のために最も有効な手段でもあるフッ素洗口法の普及に努めているところでありますが、この推進に当たっては種々の理由により反対を唱える人々も存在することもすでに御承知のことと存じます。これらの人々は、「フッ素研究会」と称する虫歯予防へのフッ素利用に反対する立場の集会を昭和56年より毎年開催しておりますが、このたび、貴村医療センターの J 氏が、添付資料1にありますように、きたる7月17日に群馬県高崎市で開催されるフッ素研究会において、「新潟からの報告──新潟大学歯学部予防歯科におけるフッ素洗口人体実験事件の経過報告」と題する報告を行うとする情報を得ました。
 ここでいわれている“フッ素洗口人体実験”とは、今までの経緯から推測するに、新聞紙上やニュースで話題となった、フッ素洗口液を飲み込む学生実習のことと思われます。本実習に関しては、先ほど述べたフッ素利用を反対している人々が、学生の人権を無視した人体実験であるとして新潟県弁護士会人権擁護委員会へ添付資料2に示した内容の人権救済申し立てを行っておりますが、申し立て人代表者による共同記者会見に貴村の J 氏が同席していたことからも、7月17日には、本件について申し立て人と同等の立場から報告が行われることは明白であると考えております。
 本実習は、添付資料3の新潟大学歯学部の公式見解に示されているとおり、学生実習として行われたものであります。貴村の J 氏は、資料1で本実習を“人体実験”としておりますが、これは当教室の名誉を著しく損ねるものであるばかりか、学生実習に対する不当な干渉行為であると考えております。かかる大学教育の自治権に関する侵害行為とも言うべき行為が、貴村の職員を通じて行われようとしていることは、大学教育に責任のある立場の者として、誠に遺憾に思う次第であり、善処をお願いする次第です。

 

 
【別紙2】
 

平成2年11月6日
守門村村長
     F 殿
新潟大学歯学部予防歯料学教室
教授  A     

第11回フッ素研究会における貴村医療センター職員の発表について

 秋冷の候、貴殿におかれましては益々御清栄のこととお慶び申し上けます。
 平素より歯科保健につきましては御理解をいただき感謝いたしております。
 このたぴ、貴村医療センターの職員が、11月18日、新潟市にて開催される第11回フッ素研究会において、当教室の学生実習に関連した発表を行うとの情報を入手いたしましたので、一言申し上げたくお便りした次第です。
 
 第11回フッ素研究会プログラム(添付資料1)に記されている「要望書」とは、昭和63年に県弁護士会に対して行われた人権救済申立(添付資料2)について同会が最終的に示した結論のことで、申し立てより約2年後の平成2年1月29日に出されました。その要旨は、実習によって学生の一部に生理的機能障害を及ぼしその人権を侵害したとして大学の自主的努力を期待するというものです(添付資料3)。しかしながら、この要望書は、調査を行った学生がたった1名であるなど調査そのものが不備であったり、調査事項の誤認や医学的および教育的に誤った判断が随所にみられる極めて杜撰なものでした。このため、私どもの学部では、本実習問題は、医学的・教育的に全く問題はない旨の見解を出しておりますし(添付資料4)、当教室といたしましても、県弁護士会からの要望書は当教室の名誉および信用を著しく毀損し、かつ大学教育に対する甚だしい干渉行為であるとして、本年2月16日付で県弁護士会に対し抗議文書(添付書類5)を提出しております。そして、この抗議文書に対する県弁護士会からの回答は一切ありませんでした。
 
 以上、当教室の学生実習問題の経過について説明申し上げました。
 私どもは、本問題は県弁護士会と当教室との間で、すでに解決のついた問題であると認識しております。しかしながら、このたび貴村職員による発表につきましては、その内容の適切さについていささかの懸念を持っておりますので、善処していただきたくお願い申し上げる次第です。





 実習で飲用したフッ化ナトリウムはフッ素量にして18mg で、参加した学生が3年生であることから、21歳前後の男女の平均体重を調べると、それぞれ60kg、50kg前後ということでした。幅を持たせて体重を45〜70kgとすると、体重あたりの急性中毒量は0.26〜0.40mgF/kgとなり、急性中毒量とされた「2mgF/kg」の4分の1を下回る量となります。
 
 ここで、逆に現在に至るまで推進派が主張している「2mgF/kg」説を適用して上記の体重から逆算してそれぞれの急性中毒量を求めると、体重45kgの人は90mgF、70kgの人は140mgFとなり、この説が正しければ、この量を下回れば急性中毒症状を回避できた筈で、18mgFの飲用は問題となり得ない筈でした。
 
 この新潟大学の実習について日本フッ素研究会の成田憲一先生は「新潟大学歯学部予防歯科学生実習のフッ素洗口液内服実験とそれに対する新潟県弁護士会の『要望書』に関する2,3の感想」の中で次のように指摘しています7)

 今回の問題のポイントは,フッ素洗口液を全量誤飲したとして,それで急性中毒症状の初期症状としての不快症状が起きるか否かの問題であります.しかし良く考えて頂きたい.もしも新大予防歯科の主張を全面的に認め,この実験で急性中毒は起きなかったと仮定しますと,この実験は次のような極めてマンガチックなものとなってしまうのです.新大歯学部予防歯科では,学生の実習指導にあたる医局長は「急性中毒発現量体重1キログラム当たり2ミリグラムは歯科医学界では確立した知見であり,その7分の1である本件フッ素量では問題となる不快症状は発現しない」9)はずの 18mg のフッ素を使って,学生に「フッ素の急性毒性と題し,目的として,ヒトのフッ素の急性毒性について,盲検法により実験し,その検討事項の一つとして,フッ化ナトリウムの急性毒性量」9)というメモを渡しフッ素の急性中毒実験をするように指導した.つまり大学は起きる筈のない急性中毒実習をするようにとのテーマを学生に与えたという訳です.
 
 騙されていることを知らない学生たちは,与えられたテーマどおり 18mg のフッ素の入ったフッ素溶液を飲んで起きるはずのない,吐き気,腹痛などの急性中毒症状を出したという話になります.しかもその中でもバカな学生は,すっかりその気になって3人も吐いたりした.さらに間抜けな学生は,その実験結果を統計学的に処理し,面倒な計算をまじめにやり,二つのグループの間に統計学的に有意差を認め,フッ素による急性中毒が起きた事を確信した学生は,「Fの摂取による不快症状の代表的なものは,吐き気であると言えるのではなかろうか」とか「有意差が認められたことから,特に,小学生の児童に洗口液を誤飲させることは避けたほうが良いことが示唆される」9)などというデタラメなレポートを提出したということになるのです.

9)新潟県弁護士会,要望書:1990



 新潟大学の実習に関し、教室関係者らはフッ素の急性中毒の発現量は体重1キログラム当たり2ミリグラムで、この中毒量が歯科医学界では確立した知見であると主張していますが、成田先生の指摘するように、急性中毒症状の発現する筈の無い量で実験(実習)することは実に不可解な事と言わねばなりません。また、なぜ「フッ素の急性毒性について実験する」ために自らが主張する中毒量のおよそ7分の1を使うことになったのか説明がつかないと考えられます。
 
 逆に、仮に前掲の近藤武先生の見解、つまり「NaF による急性中毒発現量は0.1〜0.5mgF/kgとするのが妥当と考えられる」や、秋庭賢司先生が広範な文献調査によって「推定 0.1〜0.8mg/kg で急性中毒が発生している」と指摘されている値が急性中毒量だとすると、新潟の実習で観察された諸症状は説明がつくと考えられます。
 
 むしろ教室関係者は、うすうす急性中毒量=2mgF/kg 説が急性中毒症状としてかなりの症状を伴う事を知っていて、ゆえに「フッ素の急性毒性について実験する」ために、とても体重あたり2mg のフッ素量を学生に飲ませる事が出来なかったのではないかと、そのように推測したくもなります。
 
 現在、全国的にフッ化物洗口の普及・推進が行われていますが、その最大の推進者は学者と一部の歯科医師です。フッ化物洗口や水道水フッ素化(フロリデーション)などのフッ化物応用の学術的研究は、この推進者が自ら担っている場合がほとんどで、そのような点から、自らが推進する活動のために有利な研究をし、逆に不都合となりかねない研究、つまり安全性を検証するような研究が行われないような、偏った研究が行われているのではないかと、危惧するところです。
 
 むし歯予防のためにフッ化物を応用することに否定的な見解を持つ者に「不安を煽る」「反対運動に生き甲斐を見い出して活動‥‥」1)などと誹謗中傷し、フッ化物応用に「賛否両論などありません」などと否定的見解があたかも存在しないかの如く宣伝・広報しているのは残念なことです。
 
 今年(2003年)からフッ化物洗口が国、自治体によって大々的に推進されています。しかし、子供たちが高濃度の洗口液を誤飲する可能性があり、急性中毒量が如何なる量であるかが重大な意味を持つにも関わらず、その急性中毒量が1899年の100年以上も前の特定個人(たった1人)の体験的報告に依っているなどということがあってはならないと思うのですが、いかがでしょうか。このような事を書くと、中にはそのような事はあるはずが無い、と思われる方も居られると思いますが、どうか自らお調べになって下さい。
 
 平成14年3月末までに集計された調査によると、わが国で幼稚園児から中学校生徒の集団的フッ化物洗口の実施人口は30万人を突破したと言われています8)。このような多人数の中に顕在化しなかったフッ化物洗口液の飲み込みによる中毒症状の発現がかなりあると考えられるのですが、幾つか指摘しておきたいと思います。

1.  洗口液の誤飲によって急性中毒症状を発現した子供たちがいると推測されるが、現在、一般的に急性中毒症状発現事例を一元的に教育委員会などに報告するシステムが整備されておらず、またそれを公表するようなシステムになっていないと考えられることから、各県単位でこのような中毒事例をどこかで(例えば県の教育委員会、教育庁で)一元的に集めるシステムを早急に整備し、公表する必要がある。
2.  フッ化物洗口後に唾液が過剰に出たり、吐き気、嘔吐、腹痛などが認められた場合、適切な処置が取られるべき事は当然として、教師・養護教諭にあっては、その症状がフッ化物洗口をする前から有ったかを聞き取り、その症状がフッ化物洗口液の飲み込みに起因すると疑われたら、教育委員会などに報告すべきである。
3.  フッ化物洗口が「週1回法」で行われている場合、通常 NaF 0.2%(900ppmF)溶液で行われることになるが、特に低年齢の体重の軽い児童において急性中毒発現の危険性が高いと推測される。
4.  学校などでフッ化物洗口を昼食前に行う場合、朝食を食べてこなかった児童に急性中毒発現の危険性が高いと推測される。(空腹の状態か否かによって症状の有無が大きく左右されると思われる。)


 急性中毒量に関する100年以上も前の文献が現在でも通用するような、科学的に優れたものであるならいざ知らず、この Baldwin の報告を未だに急性中毒量2mgF/kg 説の根拠としていることは、見過ごすことの出来ない重大な問題であると考えられます。

 最後に、現在わが国でフッ化物洗口を推進する学者らが「急性中毒量=2mgF/kg説」の根拠としている BALDWIN, H.B. の論文 "THE TOXIC ACTION OF SODIUM FLUORIDE" を国立国会図書館から取り寄せたので、全文を掲載します。翻訳はフッ素毒警告ネットワークの村上徹先生(医学博士)が「デタラメなフッ素洗口の安全性の科学的根拠」と題して公開しているサイトで読むことができます。

 既成事実化しつつあるフッ化物洗口について、このサイトがもう一度安全性を再検討するために有用な、資料的価値があれば幸いです。

※追記:
 
 なお、要望書および警告書中の小林清吾助教授は2004年現在、日本大学松戸歯学部教授で同学部附属歯科衛生専門学校校長である。


THE TOXIC ACTION OF SODIUM FLUORIDE.1

BY HERBERT B. BALDWIN.

Received April 10, 1899.

    The title of this article was suggested by a recent case of accidental poisoning by means of sodium fluoride. The substance is now largely sold as an insecticide put up in tin cans resembling baking-powder boxes. In this way and on account of its now somewhat extended use in the arts there is considerable liability of accidental poisoning from it. The possibility of future accidents, and the fact that in searching for literature on the salt as a toxic agent no record was found of any severe or fatal poisoning, induced the writer to present a brief history of the case together with such other information as could be collected.

    Some pan-cakes served for breakfast were partaken of by six or seven persons. Some ate very sparingly, one woman only a portion of one, while one man ate three or four of them. All who had eaten vomited within five to fifteen minutes afterward. In some cases purging occurred, in others it did not. In one case, at least, this purging and occasional vomiting continued for a day or more, with pains in the limbs complained of.

    In the case of the man who ate three or four cakes, vomiting commenced early, but he soon recovered sufficiently to attend to his duties as bartender until early in the afternoon when he was obliged to retire to his room. He died early in the evening of the same day, practically without medical attendance. Further symptoms in the case could not be ascertained.

    At the time this occurred it was supposed to be a case of criminal poisoning and some milk used in mixing the cakes was suspected. An analysis, by the writer, of this milk and a portion of the viscera of the deceased failed to detect any of the usual mineral poisons. But a small amount (0.007 gram) of what looked like ordinary white sand was separated and preserved.

    Further investigation by the authorities resulted in finding a box of roach poison by the side of the baking-powder box and an analysis showed it to consist of sodium fluoride which contained as an impurity a small amount of sand which was microscopically identical with that recovered from the stomach of the deceased.

    This served as a clue, and although the contents of the stomach had been destroyed, a little mucus scraped from a small portion of tissue that had remained in the laboratory for six weeks, contained enough of the poison to be detected with certainty.

    The mucus was macerated with a little water and filtered. The filtrate was precipitated with calcium chloride and a very small precipitate (probably two or three milligrams) of calcium fluoride obtained. This, after drying, was sufficient, when mixed with a fraction of a drop of sulphuric acid, to strongly etch a piece of glass. The sodium was detected before precipitating by means of flame coloration and the spectroscope.

    There was no means of knowing exactly what the fatal dose had been in this case, but judging from the relative amounts of sand in the stomach and the roach poison, it must have been at least ten grams.

    The stomach was nearly empty and contained only a small amount of a gray slimy mucus that clung rather tenaciously to the mucous membrane which was somewhat inflamed.

    While the above investigation was in progress an almost identical accident occurred in another city. Here fairly accurate data were obtainable regarding the dose and symptoms.

    About twenty-six grams of the fluoride were used instead of baking-powder in making twenty-six wheat cakes for breakfast. One brother ate nine, a daughter six, the mother (age sixty-nine) five and another brother one. Assuming the substance to have been thoroughly mixed, the amount taken by each was, respectively, nine, six, five and one grams.

    The symptoms varied considerably as follows: The man who had taken nine grams was seized with very violent cramps almost immediately afterward. These continued at frequent intervals for about thirty-six hours and were followed by severe pain for three or four days before recovery. Purging commenced quite early and vomiting in about four hours. Retching continued for two or three days.

    The daughter who had taken six grams felt sick when eating the last cake and vomited in five or ten minutes. Sometime afterward she took some mustard water and vomited again. She felt weak and sick for two days. No diarrhea.

    The mother took but five grams but was the most seriously affected of all. Although the nauseous feeling commenced, as with the others, within five minutes, she did not vomit for about five hours. Diarrhea, however, began in fifteen or twenty minutes and was a serious symptom for several days. She was confined to her bed for two weeks with extreme prostration and did not completely recover for four weeks.

    Information regarding the heart and lungs could not be obtained in any of these cases.

    Three other cases were heard of. One was a man who was made to vomit by merely tasting the substance a few times with the object of finding out whether it was borax or not. Another one (a salesman) had tasted the salt many times a day without any ill effects. The other case was a man who, while intoxicated, took in mistake for Rochelle salts about fifty grains. He was soon taken with violent vomiting and purging but recovered in a few days.

    Before these last cases cited came to the knowledge of the writer and before any literature on the subject had been found, he made the experiment of taking a few gradually increased doses of sodium fluoride to ascertain its toxic action upon himself. Merely tasting small quantities produced a slight feeling of nausea with slight salivation. 0.03 gram swallowed with some bread produced no effect. Neither did 0.09 gram taken one hour later, except a little salivation. 0.25 gram, however, taken two days afterward on an empty stomach, produced nausea in two minutes. This gradually increased in severity for twenty minutes when the period of greatest intensity was reached. There was a largely increased flow of saliva and some retching but no vomiting occurred at that time although the desire was very great. The nausea gradually subsided so that luncheon could be eaten (without relish), but vomiting took place immediately on its completion which was two hours after taking the poison. Slight nausea continued throughout the following day but disappeared on the second day.

    Although some of the toxic properties of sodium fluoride have long been known, no reference was found in the literature of anyone who had taken a large dose of it. This is probably due to its very limited commercial use in former days.

    As long ago as 1867 Rubuteau 2 in experiments on dogs and rabbits found that in dogs five-tenths gram given by the mouth made them sick but that 0.25 gram was without action. One gram injected into the blood caused serious symptoms but was not fatal. In rabbits 0.25 gram by the mouth made them sick and the same amount injected was fatal.

    These results do not agree, as regards the lethal dose, with similar experiments made later by others. and Rubuteau afterward says that the purity of the fluoride used was questionable.

    Kolipinski 3 in 1886 used it medicinally with good results in sympathetic headache, intermittent fever and epilepsy in doses of less than a quarter of a grain, larger doses being liable to cause nausea. He says "that five grains given to a dog on meat produces vomiting in a few minutes which continues until the stomach is empty, and may then cease or end a little later with much retching or ejection of mucus. * * *

    "The intravenous injection of a toxic dose (three grains for the cat) produces in this animal and in the dog death in a few hours." * * * "With the vomiting may occur evacuation of feces and urine. * * * At intervals there are moments of unrest with twitchings or tremors of the limbs. For the most part the animal is quiet and unconscious. This stage begins with the cessation of vomiting which ends within the first hour. * * * The urine is slightly albuminous and rich in fluorine."

    The same authority describes an experiment where he gave at the same time to each of three males one-eighth of a grain of sodium fluoride. The urine voided at that time soon became turbid at the room temperature, while that passed two hours later remained clear for seven days from the perservative effect of the fluorine eliminated. Urine passed one to two hours afterward quickly decomposed as usual.

    Shulz 4, 1889, found that when subcutaneously injected, the lethal dose of sodium fluoride was for rabbits 0.2 to 0.4 gram, for dogs 0.3 gram and for frogs 0.005 to 0.006 gram.

    Haidenhain 5, 1889, stated that 0.05 to 0.10 gram for kilogram of body weight injected into the blood of dogs produced death.

    Weinland 6, 1894, in experimenting with the sodium salts of the halogens on mucous membrane from the throat of the frog found that equimolecular solutions killed the membrane in the following orders: Sodium fluoride (two and one-tenth per cent.) in one minute; sodium iodide (seven and five-tenths per cent.) in ten minutes; sodium bromide in forty-five minutes, and sodium chloride (two and nine-tenths per cent.) in sixty minutes.

    P. Grützner 7, 1893, found the same order of sensitiveness for nerves.

    Czrellitzer 8, 1895, after reviewing the work of others, concludes that sodium fluoride is an active poison for micro-organisms of all kinds, algae, and nerves and muscles of the higher Organisms. He proves that the poisonous action is stronger on some kinds of cells than others. After citing the theories of several authors he believes there is no satisfactory explanation of the way in which it exerts its poisonous action.

    It appears from the evidence thus far obtained that the most characteristic symptoms produced by sodium fluoride in the individual are early nausea, vomiting, and salivation. Its detection may be accomplished, as in the case cited, by precipitating the solution with calcium Chloride and testing the calcium fluoride obtained for fluorine. The results of Kolipinski's experiments indicate that an examination of the urine would also be important in cases of suspected poisoning.

    The facts ascertained seem sufficient to class sodium fluoride among the less violent poisons and as such it ought to find a place in works on toxicology.


1 Read at the meeting of the New York Section, April 7, 1899.
2 Étude experimentale sur les effets physiol. des fluorures. Paris, 1867.
3 Med. News, 49, No.8, Philadelphia, 1886.
4 Untersuchungen über die Wirkung des Fluornatriums und der Flüssaure: Arch. f. exp. Path. und Ther., 1889.
5 Neue Versuche über die Aufsaugung im Dündarm. --Pflüger's Arch., 1894.
6 Ueber Chemische Reizung des Flimmerepithels. --Pflüg. Arch., 58, 1894.
7 Ueber Chemische Reizung Motorische Nerven: Pflüg. Arch., 53, 1893.
8 Zur Kentniss des Fluornatrium, Inaugural Dissertation, Breslau, 1895.

 ※原文では文献・注釈番号は頁毎に1から割り振られていたが、通し番号とした。


 ご意見、ご感想、間違いの指摘などがございましたら、メールでお送りいただけたら幸いです。



1) 日本口腔衛生学会・フッ化物応用研究委員会編:フッ化物応用と健康─う蝕予防効果と安全性─,平成10年6月5日発行,(財)口腔保健協会.
2) 村上徹:わが国のフッ素推進論者が,ヒトのフッ素急性中毒量を「体重kgあたり2mg」とする説の根拠をなすバルドウィン論文の翻訳. フッ素研究,第10号,49〜52頁,1989.
3) 秋庭賢司:フッ素による急性中毒量の再検討を.フッ素研究,16号,5〜21頁,1996年.同様の内容の英文論文:Akiniwa, K.:Re-Examination of acute toxicity of Fluoride. Fluoride 30(2):89-104,1997.
4) 飯塚喜一:口腔衛生学,244,永末書店,東京,1972.
5) 社団法人東京都歯科医師会編集:フッ化物応用の手引き─フルオライドA to Z─.監修:眞木吉信東京歯科大学教授,東京都健康局政策部医療政策課発行,平成15年3月.
6) 近藤武:地域性歯牙フッ素症.(財)口腔保健協会,平成3年9月15日.
7) 成田憲一:新潟大学歯学部予防歯科学生実習のフッ素洗口液内服実験とそれに対する新潟県弁護士会の「要望書」に関する2,3の感想,フッ素研究,11号,53〜57頁,1990年.
8) 日本むし歯予防フッ素推進会議:道府県別の集団応用でのフッ化物洗口実態調査結果(平成14年3月),日F会議事務局だより,2002-No.3,2002年9月発行.

 

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