フッ素化水道水に含まれる程度の低濃度のフッ化物にも有害性、特に発ガン性がある:無害説に反論する
秋田市で行われた公開討論会でフッ化物洗口を推進する立場のパネリストの一人(長崎大学歯学部口腔保健管理分野の飯島洋一助教授)は、「フッ化物に実験動物で多量の投与で有害性、発ガン性があったと言っても、実際的なフッ素化水道水に含まれる程度の濃度では、問題にならない」との主張を述べられました。このような論理はフッ化物応用を推進する他の学者や歯科医によって繰り返されると思います。それでこれについて以下、反論します。 |
1)雑誌「SCIENCE」1992年、第258巻、261-265ページ「Rodent Carcinogens Setting Priorities」について:
この論文はレタスやオレンジジュース、リンゴなど、ありふれた食品に残留した殺虫剤や、調理の過程で生成する微量の発ガン性物質や、微量成分として発ガン性を示す化学物質が含まれているが、人間が通常に摂取する程度の食品量では問題にならないということを言っています。当然のことです。(この論文の表に井戸水と水道水が出ていますが、問題としている発ガン性物質は
それぞれトリクロロエチレンとクロロフォルムです。)HERP(Human Exposure/Rodent Potency Index)の算出方法やその趣旨にも異論はありません。
2)IARCが出している874物質の発ガン性リスク一覧について:
IARC(International Agency for Research on Cancer)は確かに「水道水に含まれる無機のフッ化物」(inorganic fluorides in drinking water)をGroup 3、つまり「ヒトに対する発ガン性が分類できない化学物質、混合物、環境」に含めています。IARCによる「水道水に含まれる無機フッ化物の評価」にはその根拠が詳しく掲載されていて読むことができます。しかしこれは1982年のもので、次の評価は1987年であったと記されており、「Last updated:8 April 1998」とあるので、1982年の評価がそのまま1998年、そして今まで変わりなく、掲載が続いていることになります。また最新の水道水成分の評価はIARCのモノグラフの中にあるもののフッ化物についての再評価はありません。
3)1982年、あるいは1985年以降のフッ化物の有害性、特に発ガン性についての研究:
米国では水道水フッ素化が行われているため、論争は激しく、様々な研究が行われてきました。1973-1987年のアイオワ州の一部とシアトルで行われた疫学調査(1991年にフーバーが総括)、有名なNTPによるマウス、ラットにおける発がん研究が1990年、多くの疫学調査や動物実験報告を評価した1993年と2006年のNRC Reportなどです。特に最新のNRC Report(2007年)ではその発ガン性の評価の部分で、疫学調査や症例対照研究に基づいて、フッ化物が1ランク上の「possibly carcinogenic」になる可能性を指摘しています。また発ガン性だけでなく、他の様々なヒトへの有害性が明らかになってきているのです。それらをすべて無視して「1982年(つまり25年以上も前)のIARCの記載」一つだけを引用して、「発ガン性はない、問題ではない」というのは単純で強引ではないでしょうか。
4) NRC Report(2007年)の影響:
この報告書は、今までフッ化物応用を一貫して推進してきたアメリカ歯科医師会(ADA)へ大きな影響を与えたようです。ADAは2006年11月(NRC は予備的なReportを2006年3月22日にすでに公表し、大きな反響を巻き起こしていました。)
、会員向けの緊急通知を出し、「フッ素入り歯磨きは2歳未満は禁止、2歳未満のフッ化物洗口は推奨しない」としました。また「乳児の粉ミルクをフッ素化水道水で溶いてはならない」とも通知(http://www.ada.org/prof/resources/pubs/epubs/egram/egram_061109.pdf)
しました。これらの緊急通知の背景にはフッ化物の有害性で最も見えやすい歯のフッ素症(斑状歯)の軽度のものが、米国の就学児童の32%にも認められることが明かとなったためでしょう。
「文責;加藤純二」【2008年1月27日作成】
宮千代加藤内科医院(仙台市)のホームページ