ハーバードの教授、調査を受ける
 
フッ化物と癌の関連が隠されていた可能性がある


Juliet Eilperin
ワシントン・ポスト紙スタッフ・ライター
2005年7月13日(水),ページ A03

【原題】
Professor at Harvard Is Being Investigated
Fluoride-Cancer Link May Have Been Hidden
 
By Juliet Eilperin
Washington Post Staff Writer
Wednesday, July 13, 2005; Page A03

【リンク: 原文スナップ

 連邦調査官らとハーバード大学当局者らは、ハーバード大学の教授が、フッ素化水道水(注:フッ化物を添加された水道水)と若い男性の骨癌との関連を示唆する研究結果を隠蔽していたかどうかを調査中である。
 
 チェスター・ダグラス(Chester Douglass)教授の130万ドルの研究に資金を提供している米国国立環境健康科学研究所(NIEHS)と、ハーバード大学は、なぜこの大学歯学部の疫学者が連邦当局者にフッ素化水道水と骨癌の稀な一種である骨肉腫の発生について、有意の相関関係が認められないと言明したかを調査している。ダグラス教授は企業が資金を提供して発行している「コルゲイト(Colgate) 口腔ケアレポート」の編集責任者をしているが、「若い年齢でフッ素化水道水を飲んだ男の子は癌によりなりやすい」と結論づけた2001年の博士論文の指導をしていた。
 
 民間非営利の環境保護団体である環境ワーキンググループ(The Environmental Working Group)は、先月末、連邦政府当局者らにダグラス教授がフッ素化水道水のありうる危険性を大したことでないように見せるために国立研究所への2004年のレポートを歪曲したかどうかを調査するよう求めた。
 
 水道水のフッ素化事業(米国民の1億7千万人以上が飲んでいる)は、長年、その是非が論争されているが、大多数の連邦と州の当局者が虫歯予防に大きな効果があるとして支持している。疾病コントロール予防センター(CDC)は、水道水フッ素化を20世紀のトップ10に入る成功した健康施策であるとしており、多数の研究が虫歯を防ぐ効果を証明している。国立癌研究所はウェブサイトに「ヒト及び動物での多数の研究で、フッ素化水道水とガンのリスクには関連性がないことを示している」と書いている。
 
 ダグラス教授は去年、フッ素化水道水を飲んだ後に骨肉腫が発生する頻度(オッズ)は非フッ素化水道水を飲んだ場合の頻度に比較して、「統計的に差が無い」と報告した。しかし2001 年にダグラス教授の部門の博士課程に在籍するエリーゼ・バッシン(Elise Bassin)は、同じ彼のデータを用いて博士論文を提出し、「男性では、一定レベルかそれ以上のフッ化物濃度への暴露が、骨肉腫が発生するリスクの上昇と関連があった。その関連性は5〜10歳で明白であり、6から8歳でピークを示した」」と結論づけた。
 
 骨肉腫は稀な癌ではあるが致死的であり、男性には女性の二倍の頻度で認められる。バッシンの報告はフッ化物と骨肉腫の関連性についての人における現在得られる最も厳密な研究であると考えられる。患者らは癌と診断されてから平均3年間の寿命であった。1990 年に、国立毒性学プログラムによって行われた動物実験では、オスのラットで、フッ素化水道水と癌発生との間に「両義的(どちらとも取れる)証拠(equivocal evidence)」が見いだされた。そしてその10年以上前には、水道水のフッ素化地域の若い男性に、非フッ素化地域に比して高い比率で骨肉腫が認められることが、ニュージャージー州の健康局による調査で見いだされている。
 
 「フッ化物の安全性は公衆衛生上の大きな問題であり, ハーバード大学の一教授が、可能性として公共の研究結果を歪曲したことは大きな影響を持つ」とリチャード・ワイルス(Richard Wiles)環境ワーキンググループの首席副会長は語った。さらに彼は、Colgate-Palmolive 社が資金を提供しているニュースレターの編集に携わるダグラス教授の役割が「利益衝突(conflict of interest)の様相を呈している」と付け加えた。
 
 1978年以来ハーバードで教え、1997年からはColgate 社の季刊誌を編集しているダグラス教授は、大学の出版局に調査を委ねた。ハーバード大学医学部のスポークスマン・ジョン・レイシー(John Lacey) は、大学は「不正行為のすべての申し立てを真剣に取り上げるし、研究の不正に対する申し立てを検討するための標準的なシステムがある。また大学はこの研究に関する報告について提起された問題について検討する調査委員会を設けている」と語った。
 
 ダグラス教授はフッ化物と癌の関連性についてのニュースレターの記事の編集には関わってこなかったし、公に証言していない、とレイシーは付け加えた。
 
 国立環境健康研究所はハーバード大学と同様の声明を発表し、同研究所が「不正の申し立てを非常に深刻に受け止める」と述べ、この問題を検討中であるとした。
 
 バッシンを取材することはできなかった。
 
 ボストン大学の公衆衛生学教室の環境発癌因子の専門家リチャード・クラップ(Richard Clapp)を含む、何人かの公衆衛生の専門家らは、バッシンの研究によって追加的な研究が促されるはずであると考えている。摂取されたフッ化物の半分は骨に沈着し、そしてフッ化物が骨肉腫の起こる骨端の成長を刺激することから、研究者らは、関連の可能性を疑っている。環境保護庁は米国科学アカデミーに水道水フッ素化の安全性を調査するように委託した。そのレポートは来年に出る予定である。
 
 クラップはバッシンの研究について「それは重要であり、研究が続けられる必要がある」と述べ、そして「若い男子に焦点を合わせることには正当な生物的根拠がある」と述べた。

 

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