厚生科学研究
「フッ化物応用の総合的研究」班作成の
パンフレットについて


 2001年厚生科学研究「フッ化物応用の総合的研究」班による「フロリデーションと健康」というパンフレットに以下に示す説明があります。

 
天然の食品、お茶、海水のフッ化物イオン濃度


〜お茶の葉のフッ化物はフロリデーションの100〜300倍以上の濃度〜

 普通の水道水や飲料水のフッ化物イオン(フッ素)濃度は0.1ppm 以下ですが、私達が日常飲んでいるお茶はその10倍前後のフッ化物イオン(フッ素)濃度です。そしてお茶の葉の中のフッ化物(フッ素)は、なんと 100ppm 〜 300ppm ですので、フロリデーションのフッ化物の100倍から300倍以上の濃度が、お茶の葉に含まれています。魚やエビ、貝類、海藻も、陸の食品より多くの天然のフッ化物(フッ素)を含んでいます。ですから、海産物をとることは、カルシウムやリンやマグネシウムなどのミネラルだけでなく、フッ化物(フッ素)もよくとることになります。
 
 また、海水が歯や骨を強くする人間の許容限界濃度(1.5ppm)に近いことは興味あることです。海の魚や甲殻類が硬い骨や殻でできているのは、海水のカルシウム、リン、マグネシウムなどのミネラル成分によることはよく知られていますが、もちろん、このフッ化物(フッ素)が海の生物の石灰化に貢献しているのです。フッ化物(フッ素)は微量の存在ですが、石灰化には欠かせない物質です。


  フッ化物イオン濃度  
  お茶 0.5ppm〜2.0ppm
  お茶の葉   100ppm〜300ppm
  海水 約1.2ppm〜1.3ppm  


用語: @ 予防に使われるフッ素(Fluorine)は、フッ化物(Fluoride)です。
A 水道水フッ化物添加(水道水フッ化物濃度調整)はフロリデーション(Fluoridation)と呼称されます。

 表題の2行目──
 

〜お茶の葉のフッ化物はフロリデーションの100〜300倍以上の濃度〜
 
    ──に注目していただきたいのですが、お茶の葉がフロリデーションの100〜300倍以上のフッ化物濃度とあります。これは、相対的に「フロリデーション」のフッ化物濃度がいかに低いかを印象づける説明と言えるのではないでしょうか。説明文中にも──
 
 そしてお茶の葉の中のフッ化物(フッ素)は、なんと 100ppm 〜 300ppm ですので、フロリデーションのフッ化物の100倍から300倍以上の濃度が、お茶の葉に含まれています。
 
    ──などとあります。
 
 お気づきになる方もおられると思いますが、これらの説明は、あくまで「乾燥したお茶の」のフッ化物濃度との比較であり、次の画像に示すような比較をしていることになります。


 
お茶の葉
  
 
フロリデーション水

 フロリデーションが実施された場合に飲む水のフッ化物濃度がどの程度のものかを説明するためには、あくまで「お茶」(飲む段階の、液体の「お茶」)で説明すべきでしょう。
 
 このような事を理解した上で、この説明を読めば、確かに「お茶の葉のフッ化物はフロリデーションの100〜300倍以上の濃度」というのは正しいのですが、なぜ「お茶」(飲む段階の、液体の「お茶」)と「フロリデーションされた場合に飲む水」との比較では無く、「お茶の葉」との比較を持ち出すのでしょうか?我々は通常、「お茶の葉」をそのままの状態で食べたり飲んだりする訳ではありません。


 
お茶
  
 
フロリデーション水

 一般的に「お茶」(飲む段階の、液体の「お茶」)のフッ化物イオン濃度は大体 0.5〜2.0ppm です。フロリデーション(水)のフッ化物イオン濃度は大体 1ppm 前後です。それほど大きな差はありません。



「お茶の葉のフッ化物はフロリデーションの100〜300倍以上の濃度」
 
「そしてお茶の葉の中のフッ化物(フッ素)は、なんと 100ppm 〜 300ppm ですので、フロリデーションのフッ化物の100倍から300倍以上の濃度が、お茶の葉に含まれています。」

 なぜこのような「不可解」な比較を持ち出して説明をするのか、それは厚生科学研究班の執筆者に聞かないことには分からないでしょうが、おそらく「何も間違ったことは書いていない」と答えることでしょう。

 通常そのままの状態で食べたり飲んだりすることの無い「お茶の」のフッ化物濃度と「フッ素化水道水」のフッ化物濃度を比較して説明するような方法は、歯科界で認められる方法なのでしょうか。ある種の人たちしか使わないような「文章テクニック」を使ってフロリデーションのフッ化物濃度が如何に低いかを強調し、以て一般国民にフロリデーションを勧めるようなやり方は、科学的、社会的に適切な方法と言えるのでしょうか。


 厚生科学研究「フッ化物応用の総合的研究」班のメンバーは、長年フッ化物応用問題に取り組まれてきた専門家です。誤解や錯覚を与えるような説明でフッ化物応用を推進することはあってはならないと思います。

 出典:「フロリデーションと健康」
    2001年厚生科学研究「フッ化物応用の総合的研究」班
    主任研究者 高江洲義矩(東京歯科大学名誉教授)

 

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