フッ化物洗口における「試薬」使用の問題
 
〜「試薬」の使用実態 〜


 フッ化ナトリウム──「医薬品」と「試薬」
 
 現在、一部の小学校などの教育機関で虫歯予防のためにフッ化物洗口(フッ素洗口)が行われています。このフッ化物洗口ではフッ化ナトリウム剤を希釈して洗口液を作り、洗口に用います。このフッ化ナトリウム剤には「ミラノール」「オラブリス」などの薬事法の許可・承認を取得した「医薬品」を用いる場合と、フッ化ナトリウムの「試薬」を用いる場合があります。
 
「試薬」とは、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」による定義によれば──

○化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和48年10月16日法律第117号)
 
 第3条中の条文より
 
 試薬:化学的方法による物質の検出若しくは定量、物質の合成の実験又は物質の物理的特性の測定のために使用される化学物質をいう。

        ──とあります。また、社団法人 日本試薬協会によれば──

 (一方、)法律上の定義とは離れて一般的な試薬の概念として考えた場合、試薬は品質や使用量などの点から一般の工業薬品とはおのずから異なった品質、供給形態が要求されるので、これを付け加えると、試薬の概念としては、「検査、試験、研究、実験など試験・研究的な場合において、測定基準、物質の検出・確認、定量、分離・精製、合成実験、物性測定などに用いられるものであって、それぞれの使用目的に応じた品質が保証され、少量使用に適した供給形態の化学薬品」ということができ、これによって工業薬品との区別がより明確となる。なお、この試薬の概念からは病院・医療関係で用いる臨床検査薬は試薬の範疇にはいるが、厚生労働省では、通達によって「体外診断用医薬品」とし、行政的な扱いを一般の試薬と別にしている。
 
 英語では、試薬は Analytical Reagents, Reagent Chemicals, Laboratory Chemicals などと表現されている。また医薬品と明確に区別するために not for drug use などと表示に付記されることが多い。

        ──ともあり、「試薬」は、その用途として虫歯の予防などの医薬品的な用途に使用されることが目的とされている物では無い事が分かります。

 医薬品とは
 
 「医薬品」の定義は「薬事法」にあります。

○薬事法(昭和35年8月10日法律第145号)
(定義)
第二条  この法律で「医薬品」とは、次の各号に掲げる物をいう。

 日本薬局方に収められている物

 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、器具器械(歯科材料、医療用品及び衛生用品を含む。以下同じ。)でないもの(医薬部外品を除く。)

 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、器具器械でないもの(医薬部外品及び化粧品を除く。)

 この日本薬局方とは──

 日本薬局方【にほんやっきょくほう】
 
 日本国内の医療に供する重要な医薬品の品質・強度・純度などについて定めた基準。薬事法に基づき厚生大臣が制定し、5年ごとに改正される。局方。薬局方。
 
 出典:大辞林 [(株)三省堂,1993]

 ──とあり、この日本薬局方に収められている物が医薬品であるということです。

 では、薬事法2条の2号、3号はどういう意味なのでしょうか。


 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、器具器械(歯科材料、医療用品及び衛生用品を含む。以下同じ。)でないもの(医薬部外品を除く。)

 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、器具器械でないもの(医薬部外品及び化粧品を除く。)

 これは、この定義により、ある物に「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用する」、または「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼす」という目的性を持たせれば医薬品に該当するということで、言い換えれば、薬効を標榜し、疾病の治療に使用するという目的性を持たせれば、医薬品として許可・承認の有無、効果の有無に関わらず薬事法上は「医薬品」に該当することになるということです。
 ただし、医薬品として許可・承認を取得していない限り「無承認無許可医薬品」となり、これは販売・広告などが規制されています。

 そこで、どの様な表現が「薬効の標榜」に当たるかなど、あるものが医薬品に該当するか否かを判断するために厚生省薬務局長通知「無承認無許可医薬品の指導取り締りについて」(いわゆる「46通知」)の別紙に「医薬品の範囲に関する基準」が定められています。また、厚生省薬務局監視指導課長通知「無承認無許可医薬品の監視指導について」の別添に「無承認無許可医薬品監視指導マニュアル」があり、この問題を考える際に参考となります。

【参考】
 ・「無承認無許可医薬品の指導取り締りについて」
      (昭和46年6月1日、厚生省薬務局長通知、薬発476号)
    別紙「医薬品の範囲に関する基準」
 
 ・「医薬品の範囲に関する基準の改正について」
      (平成13年3月27日、厚生労働省医薬局長通知、医薬発243号)
 
 ・「無承認無許可医薬品の監視指導について」
      (昭和62年9月22日、厚生省薬務局監視指導課長通知、薬監第88号)
    別添「無承認無許可医薬品監視指導マニュアル」
 
 ・「無承認無許可医薬品監視指導マニュアルの改正について」
      (平成13年3月27日、厚生労働省医薬局
           監視指導・麻薬対策課長通知、医薬監麻発333号)
    別紙「無承認無許可医薬品監視指導マニュアル」

※上記の通知は厚生労働省法令等データベースシステム三重県健康福祉部の三重県薬事工業情報提供システムから入手出来ます。


 「フッ化ナトリウム試薬」
 
 さて、一部の小学校などの教育機関において行われるフッ化物洗口で使用されている「フッ化ナトリウム試薬」についてですが、大手試薬メーカーである和光純薬工業株式会社では、以下のコメントを発しています。教育機関の一部でフッ化物洗口に「試薬」を使用している実態が有るからか、同社には一般市民(「試薬」を使用する研究者等では無いという意味で)から家庭でフッ化物洗口をするために入手したいという問い合わせがしばしば有るそうです。和光純薬工業(株)では、「試薬」が医用目的の商品では無いことから断っているということで、これは商品の目的外使用について起こりうる様々な被害を未然に防止するという観点から高く評価されるべきことで、「商品が売れさえすれば良い」という対応になりがちな企業の良い見本と言えると思います。

和光純薬工業株式会社のコメント(2002年9月)
 
   193-01985  ふっ化ナトリウム   和光1級  (500g)
   192-01972  ふっ化ナトリウム   JIS特級   (25g)
   194-01971  ふっ化ナトリウム   JIS特級  (100g)
   196-01975  ふっ化ナトリウム   JIS特級  (500g)
 
   について

 こちらは、いずれも、試薬です。
 
 試薬とは、試験、研究の目的に使用されるもので、「医薬品」「食品」「化粧品」「家庭用品」には使用できません。
 
 医薬品としての許可、承認を受けた商品ではありませんので、人間に対して使用した場合の安全性についてメーカーとして保証できません。
 
 ふっ化ナトリウムは、(社)日本化学工業協会の「悪用防止対象化学物質の流通管理の指針」に基づき作成しました「悪用防止対象化学物質」としてのリストにもあげております。 次の遵守事項を十分ご理解の上お取り扱いをいただきますようお願い致します。

1.  該当製品を使用あるいは第三者に販売し、または譲り渡す場合は、不正な転用を防止するため、適切な管理を行うこと。
2.  該当製品の余剰品及び在庫品を廃棄する場合は、自己の責任において完全に処理処分し、第三者により不正に使用されないようにすること。
3.  該当製品に関係する法令等を遵守するため適切なる管理を行うこと。
4.  該当製品を第三者に販売し、または譲り渡す場合には、販売先または譲り渡し先に対して上記1、2、3の内容を通知確認をとること。

 上記からも分かりますとおり、「フッ化ナトリウム試薬」は「医薬品」として許可・承認されたものでは無いことが分かります。この「試薬」に「虫歯予防」の目的性を持たせると、薬事法上の「無承認無許可医薬品」に該当することになると考えられます。

 この「無承認無許可医薬品」販売広告などが禁止されています。

○薬事法(昭和35年8月10日法律第145号)
(販売、授与等の禁止)
第五五条 @ 前五条の規定に触れる医薬品は、販売し、授与し、又は販売若しくは投与の目的で貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

A 模造に係る医薬品又は第一二条第一項、第十八条第一項(第二十三条において準用する場合を含む。)若しくは第二十二条第一項の規定に違反して製造され、若しくは輸入された医薬品についても、前項と同様とする。
(承認前の医薬品等の広告の禁止)
第六八条
 何人も、第十四条第一項に規定する医薬品又は医療用具であつて、まだ同項(第二十三条において準用する場合を含む。)又は第十九条の二第一項の規定による承認を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。


 そこで「フッ化ナトリウム試薬」のような「無承認無許可医薬品」について販売・広告などに関わらない「使用」などについてどうかというと、これは規制はされてはいません。個人的に使用する場合は自己責任ということになります。

 そこで、小学校などの教育機関において集団的に教育・行政施策の一環として「使用」する場合、薬事法上、販売・広告に関わることが無いことから「違法」とは言えないものの、薬事法の趣旨・目的から逸脱した脱法行為ということが言えるかもしれません。「無承認無許可医薬品監視指導マニュアル」の記述から、薬事法の目的などを考え、この「無承認無許可医薬品」についてどの様に捉えれば良いかを考えるために、以下、引用します。

1 薬事法の目的
 
 医薬品は、人の生命、健康に直接かかわるものであり、その品質、有効性及び安全性を確保することが重要である。効果のないもの、有害であるものが誤って医薬品として使用された場合には、人の生命を失わせる危険さえある。また、専門的な医学・薬学の知識を持たない通常人には、その物が何であり、どのような疾病に、どのように使用したら効果があるかを判断することは不可能である。したがって、医薬品については、その特殊性にかんがみ、その品質、有効性及び安全性が適正なもののみが供給されることが必要であり、医薬品の製造、輸入、販売等を規制し、その品質、有効性及び安全性の確保を図ることが重要である。
 薬事法は、医薬品の使用によってもたらされる国民の健康への積極的、消極的被害を未然に防止するため、医薬品に関する事項を規制し、その品質、有効性及び安全性を確保することを目的としている。医薬品を製造又は輸入しようとする者は、その医薬品について承認を受ける必要があり(その物の有効性及び安全性を確認するために必要である。)、その有効性及び安全性が確認された医薬品を製造又は輸入しようとする者は、製造所又は営業所ごとに許可を受ける必要がある(承認された物を承認されたとおりに製造・輸入できるような人的物的要件を確認するために必要である。)。また、医薬品を販売しようとする者は、販売業の許可を受ける必要がある。これら必要な承認・許可を取得していない医薬品は、無承認無許可医薬品として取り締まらなければならない。

2 医薬品と食品
 
 では、どのような物が薬事法により医薬品として規制を受けるのか。薬事法においては、医薬品として規制を受けるべき物を、次のように定義している。
 

[薬事法第2条第1項]

 日本薬局方に収められている物

 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、器具器械(歯科材料、医療用品及び衛生用品を含む。以下同じ。)でないもの(医薬部外品を除く。)

 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、器具器械でないもの(医薬部外品及び化粧品を除く。)
 
 薬事法の立法趣旨が、前述のとおり医薬品の使用によってもたらされる国民の健康への積極的、消極的被害を未然に防止しようとする点にあるとすると、薬事法第2条第1項第2号又は第3号に規定する医薬品には、同法第14条(同法第23条において準用する場合を含む。)又は第19条の2に基づいて承認を受けた医薬品のみならず、その物の成分本質(原材料)、形状、効能効果、用法用量等を総合的に判断して、その物が「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている」又は「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている」と通常人が認識する物も含まれる。すなわち、口から摂取される物が医薬品に該当するか否かは、その物が薬事法第2条第1項第2号又は第3号に掲げる目的を持つものと認識されるか否かによって判断されることとなる。この場合、その薬理作用の有無は問題とはならないと解される。このような現行薬事法における医薬品の範囲についての考え方は、旧薬事法におけるものと変わるものではない。
 一方、食品衛生法において食品とは次のように定義されている。
 
[食品衛生法 第2条 第1項 ]
 この法律で食品とは、すべての飲食物をいう。但し、薬事法に規定する医薬品及び医薬部外品は、これを含まない。
 
 医薬品の定義及び食品の定義により明らかなように、口から摂取される物は、医薬品等と食品のどちらかに該当することになり、口から摂取される物のうち、医薬品等に該当しないもののみが食品とされることになる。

3 無承認無許可医薬品の指導取締りの必要性
 
 無承認無許可医薬品には模造に係る医薬品や医薬品と称しているが承認・許可を取得していない物、それに食品と称しているが医薬品とみなされるべき物とがあるが、判断が困難なのは最後の範疇に属するものであり、多くはいわゆる健康食品と呼ばれるものである。
 いわゆる健康食品について薬事法との関係で問題になる点は、医薬品として承認を受けるべき物が食品の名目のもとに製造・販売されるという点である。
 医薬品に該当する物が、薬事法に基づく承認・許可を取得せずに食品として製造・販売されるとなると、
 

@  一般消費者の間にある、医薬品と食品に対する概念を混乱させ、ひいては医薬品に対する不信感を生じさせるおそれがある、
A  有効性が確認されていないにもかかわらず、疾病の治療等が行えるかのような認識を与えて販売されることから、これを信じて摂取する一般消費者に、正しい医療を受ける機会を失わせ、疾病を悪化させるなど保健衛生上の危害を生じさせるおそれがある、
 
等の問題がある。
 国民の健康への積極的、消極的被害を未然に防止するため、このような無承認無許可医薬品は、厳正に取り締まらなければならない。
 成分本質(原材料)、形状、効能効果等から見て医薬品に該当する物が、承認・許可を得なくても製造・販売することができるとすると、何故に薬事法があり、何故に承認・許可制度があるのかという疑問を惹起させることになり、医薬品の品質、有効性及び安全性を担保している承認・許可制度その他の各種の規制を実質的に無意味化することになる。それはとりもなおさず、前述した薬事法の立法趣旨、目的を否定することにつながり、国民の保健衛生にとって由々しき問題を投げかける。無承認無許可医薬品の製造・販売を認めることは、国民の健康への積極的、消極的被害を未然に防止する観点からは許されるものではない。



 以上のことから、たとえ小学校などの教育機関で「フッ化ナトリウム試薬」を使用することが明確に違法とまでは言えないにしても、薬事法の趣旨・目的からは逸脱していると考えられ、このような「試薬」を教育現場で使用することには問題があると考えられます。

 「試薬」を使うことは歯科医師・薬剤師の裁量権の範囲内か?
 
 裁量とは国語辞典には「自分の考えで問題を判断し処理すること」(大辞林)とあります。医師などの「裁量(権)」とは何かと考えますと、一般的には「その専門的な知見から、医学的問題について、判断・処置すること(権能)」の事と考えられます。
 この裁量権は何をやっても良いなどと解すべきで無いことは言うまでも無く、患者の自己決定権による制約、その時点における学術上の見解や臨床上の知見に照らし治療法として一般に受容されていたところに従って行われたものであるか否かという観点からの制約、社会的制約(政策や法律、保険適用の有無、地域のスタンダード等)など事実上様々な制約を受けます。
 裁量権の限界として「法律学小辞典」(有斐閣,1994)には以下の記述があります。行政庁の裁量権行使に当たってその限界に該当する場合についてですので、参考となることも有ろうかと思われますので引用します。

裁量権の限界
 1意義 行政庁の自由裁量権は,たとえその行使を誤っても不当であるにとどまり,裁判所の審査権は及ばないが,裁量権の踰越(ゆえつ)・濫用にわたる場合には,裁判所が審査しうる違法の問題を生ずる〔行訴30〕。裁量権の踰越とは,法の許容した裁量の枠を超えることを意味し,濫用とは形式的には法の認める枠内であっても法の本来の目的に反して裁量権を行使することをいうが,判例は両者を一体的に裁量権の限界としてとらえている。
 2基準 裁量権の限界に該当し,違法と評価される場合として, 事実誤認(要件事実が全く欠けているのに行政行為をする場合等), 目的違反(根拠法規の予定しない目的のために行政行為をする場合等), 動機の不正(不正な動機に基づく裁量権の行使等), 平等原則違反,比例原則’違反がある。このほか, 他事考慮(本来考慮すべきでない事項を考慮に入れる等), 要考慮事項の考慮不尽を挙げる見解もある。
 
* 比例原則[抄] 目的と手段の均衡を要求する法原則。広義では,手段が目的達成のために適合的か,目的達成のための最小限度の手段か,侵害される利益が達成される利益と均衡しているか(狭義の比例原則)の3つが含まれるとするのが通例である。

 「試薬」は既に述べた通り、医薬品として許可・承認されておらず、「試薬」を使用せずとも許可・承認を受けた「医薬品」が存在し、薬事法の趣旨・目的から考えても、あるいは後述の教育的な側面から考えても、歯科医師らの裁量で「試薬」を使用する事がで出来るとする見解は不適当と思われます。

 教育上の問題:「医薬品」とそうでない物を区別する事の重要性
 
 教育機関において試薬を医薬品の代用として使用する場合、教育上の観点からも問題があるように思われます。医薬品と医薬品ではないものを区別せずに、あたかも医薬品的な効果効能を医薬品では無いものに求めうるという誤解を学童生徒に与えかねず、教育機関でこの様な薬剤の使用はすべきではありません。ちまたに医薬品的な効果効能を標榜する怪しげな商品が散見されますが、学童生徒には許可・承認された医薬品とそうでないものを区別し、安易にそのような商品を摂取するようなことが無いよう教育することが重要に思われます。薬物乱用防止や怪しげな商品を摂取することの無いよう教育すべき教育機関が、自らこのような試薬使用をすべきではありません。

 


 

各都道府県における「試薬」の使用実態

 当医院では全国47都道府県の教育委員会・教育庁に、小学校などの教育機関において虫歯予防のためのフッ化物洗口で使用する洗口液を作る際に、医薬品ではない「試薬」を使用している実態があるかどうかの問い合わせを行いました。
 
 本調査は2002年9月〜10月にかけて各都道府県教育委員会・教育庁のご協力によりまとめることが出来ました。ご回答をお寄せ下さいました教育委員会・教育庁の担当の方々に感謝申し上げます。

●: 「試薬」の使用実態がある
○: 「試薬」の使用実態がない
△: 「試薬」の使用実態が無いとは言えない、一部で「医薬品」使用がある
?: 実態を把握していない、「試薬」使用実態は不明
−: フッ素洗口を実施していない

 註) 「『試薬』使用実態がある」と分類された自治体は、試薬使用が1校以上あることを意味し、これは自治体内全ての教育機関において試薬が使用されているということではありません。

 

都道府県 回答機関 使用実態      
北海道 ──

青森県 県教委 【1】青森県内では、19校がフッ素洗口を実施している。試薬などについては、各市町村、各校で学校歯科医、薬剤師の指導助言のもとに行っており、洗口液について、県教育委員会では把握していません。
【2】試薬の入手先は、各市町村等で決定しており、県教育委員会では把握していません。
岩手県 県教委  フッ素洗口を行っている2〜3の学校の学校歯科医に問い合わせたところ、市販のフッ素洗口剤を使用しているとのことです。
宮城県 県教育庁  フッ素洗口実施校につきましては、調査をしておりませんので把握をしておりません。
秋田県 県教育庁  県内には試薬を使って洗口液を作成している学校はありません。
山形県 県教育庁  フッ化ナトリウム等の試薬で洗口液を作っています。
福島県 県教育庁  フッ素洗口を実施している学校は、ほとんどフッ化ナトリウムの試薬を使用しています。
茨城県 県教育庁  現在,県内の学校及び教育機関等においてフッ素洗口を実施しているところはないと認識しております。
栃木県 県教委 1 フッ化ナトリウム等の薬剤について
 1.8gの薬剤(1グラム中、フッ化ナトリウム110mg含有)を200ccの水で溶いたものを使用するとのことです。(1人10ml)

 
2 薬剤の入手先について
 フッ素洗口を実施している学校及び教育委員会に問い合わせたところ、薬剤は、市町村教育委員会が希望をとりまとめ、市町村保健福祉課が歯科医院に注文しているとのことです。

 
 販売元  (株)ビーブランドメディコデンタル
 商品名    ミラノール

 
3 「試薬」については、把握しておりません。
群馬県 県教委  実態を把握していない。虫歯予防のために、基本的にはブラッシングの推奨をしている。
埼玉県 ──

千葉県 県教育庁  県立学校等(県立高等学校・県立盲・聾・養護学校・その他の教育機関)において、フッ素洗口は実施しておりません。
 市町村立学校において、フッ素洗口を実施している学校はございます。洗口薬は、「医薬品」フッ化ナトリウムを使用しております。
東京都 都教育庁  東京都教育委員会では、都内でフッ素洗口を行っている学校について把握いたしておりませんので、大変申し訳ございませんがご質問に対する回答はできません。
神奈川県 県教育庁  県内の小・中学校ではフッソ洗口については特に実施していないと承知しております。
山梨県 洗口液について──フッ化ナトリウム試薬特級を使用。
長野県 県教委 ・長野県の120市町村のうち9市町村がフッ素洗口をしています。
・実施しているほとんどが、フッ化ナトリウムを使用しています。
・ある村の実態です。
 試薬名−フッ化ナトリウム和光1級
新潟県

富山県 県教委 フッ化ナトリウム等の試薬(歯科医師の指示により、薬剤師が調剤するもの)を用いたフッ素洗口の実施は当課では聞いておりません
石川県 県教委  石川県内の小中学校におけるフッ素洗口では、すべて医薬品を使用しており、試薬を使用している学校は該当がないことをご報告します。
福井県  本県では試薬を使って洗口液を作成している学校はありません。
岐阜県 県教委  岐阜県教育委員会では、一部の小学校でフッ素洗口をしていることは承知していますが、問い合わせの内容については調査していないので把握しておりません。
静岡県 県教委  試薬を使っているところも、医薬品を使っているところもどちらもあります。
愛知県 県教委 愛知県教育委員会としては、フッ化物洗口は実施しておりませんが、県下の一部の小学校において実施されていることは承知しています。
三重県 県教委  三重県教育委員会は、「フッ素洗口」は行っておりません。健康福祉部が県歯科医師会へ委託しております「8020運動推進実践モデル事業」において、一部取り組んでおりますので、下記へお問い合わせください。
   三重県歯科医師会(住所・連絡先省略)
滋賀県 県教委  フッ素洗口を実施している市町の中には、フッ化ナトリウムを使用しているところがあります。
京都府 府教育庁  フッ素洗口の洗口液−試薬を使っているところも、ミラノールの場合もどちらもあります。
大阪府 府教委  大阪府教育委員会としては、フッ素洗口は実施しておりません。
 小学校等を設置する各市町村教育委員会での対応となっており、またその実態につきましても把握はいたしておりませんが、大阪府学校歯科医会に問い合わせたところ、府内の一部で実施している市では、市の歯科医師会を通して洗口液を購入しており、お問い合わせの、試薬を用いて洗口液をつくっている所は、無いと伺っております。
兵庫県 県教委  兵庫県教育委員会としましては、虫歯予防のためのフッ素洗口は実施しておりません。なお、各市町教育委員会においては、実施している市町もあるようですが、特に調査を行っておりませんので、把握しておりません。
 詳細については、兵庫県県民生活部健康局健康増進課歯科保健専門員までお問い合わせください。
奈良県 ──

和歌山県 県教育庁  実態の把握をしていない。「試薬」使用の実態が在るか無いかは把握していない。ただ「医薬品」を使用している所がある。
鳥取県 県教委  フッ素洗口につきましては、鳥取県内の学校では実施されていませんので、その旨回答させていただきます。
島根県 ──

岡山県  岡山県立学校及び市町村(組合)教育委員会単位で、フッ素洗口を行っているところはありませんが、岡山市内の小学校4校でフッ素洗口を行っているところがあると聞いています。
 岡山市についての問い合わせ先をお知らせしますので、下記に照会願います。
  岡山市保健所(詳細省略)
広島県 県教委 ○ 県教育委員会では各市町村の実施状況については把握しておりません。
○ 従って,洗口液についても状況を把握しておりません。
山口県 県教育庁 当県においてフッ素洗口液のためのフッ化ナトリウム剤ととしてミラノールを使用しているところはありますが、試薬を使っているところがあるとは認知しておりません。
徳島県 県教育委  県内の一部の学校において、子どもの歯の健康を守るため、学校歯科医の指導の下、歯磨きを補完する手段としてフッ素洗口液(ミラノール)を使った洗口を実施し、虫歯予防に努めています。本県で使用する洗口液は、医薬品を使用しております。
香川県 県教委  県教育委員会ではその実態について把握いたしておりません。
愛媛県 県教委  虫歯予防のためのフッ素洗口に関する件についてお答えします。
 本県では、保健福祉部健康増進課において、フッ素洗口普及事業を実施しており、平成14年度は、フッ素洗口実施希望のあった小学校20校を対象としております。その事業におけるフッ素洗口について、回答します。
1)フッ素洗口液については、試薬(特級)を使用しております。
2)試薬の入手先は、試薬等を扱う薬品販売会社です。
高知県 ──

福岡県 ──

佐賀県 県教育庁 特級(註:「試薬特級」のこと)
長崎県 県教育庁 試薬を使っているところがある。
代表的な入手先:学校歯科医
熊本県 県教育庁  フッ素洗口によるむし歯予防について、本県では地域歯科保健の充実のため、主に乳幼児を対象として保健所が中心となって行われている地域もあるようですが、小学校・中学校では各1校で行われている実態があります。
 県教育委員会といたしましては、各学校においては、従来の歯磨きを中心としたむし歯予防に努めるよう指導しているところです。
 2点目のお尋ねにつきましては、本県小・中学校(各1校)で使用されている洗口液に使うフッ化ナトリウムは、新潟県の歯科保健協会から購入し、村役場の保健婦が調合したものを使用しています。
大分県 県教育庁  大分県では、フッ素洗口を学校で実施しているところはありません。
宮崎県 県教育庁  当県においては、フッ素洗口を行っている学校は、ありません。
鹿児島県 県教育庁  フッ化ナトリウムを使用して,試薬を作っている学校はあります。(特級,一級の区分は不明です。)
沖縄県 県教委  沖縄県では、久米島町(小学校6,中学校4校)と北大東村(小中併置校1校)で週1回の洗口が学校で行われています。
 フッ素洗口液については、「試薬を使っている」ということです。

 

結果の集計
 

全データ数(都道府県数) 41
フッ素洗口実施不明(把握なし)   5
フッ素洗口していない数   5
「試薬」使用実態「あり」の数 13
「試薬」使用実態「なし」の数*   7
「試薬」使用実態が「ない」とは言えない、一部又は全部で「医薬品」使用がある数   4
「試薬」使用実態「不明」の数*   7
*:富山県と山口県は担当課が「試薬使用」を認知していないというご回答で、「『試薬』使用実態『なし』の数」に含めた。

 

 結論として──提言
 
 許可・承認を取得した「医薬品」が有るにも関わらず、薬事法上の許可・承認を取得していない「試薬」は医用目的に使用すべきではありません。まして教育機関において使用することは問題です。薬事法の趣旨・目的からも逸脱している「試薬」の使用は、安全性、教育上の問題もあり、改善を要する問題と考えられます。



 ■追加(参考資料)

製品規格書:ふっ化ナトリウム  試薬  特級
 
(和光純薬工業株式会社, 2002年8月)
 
試験項目 規格値
外観 白色の結晶性粉末〜粉末
純度 99.0%以上
水溶状 試験適合
乾燥減量(150℃) 0.3%以下
酸(HFとして) 0.05%以下
塩基(NaCOとして) 0.1%以下
塩化物(Cl) 0.003%以下
硫酸塩(SO 0.005%以下
銅(Cu) 0.001%以下
鉛(Pb) 0.001%以下
鉄(Fe) 0.001%以下
ヘキサフルオロけい酸塩(SiF 0.05%以下

 

製品規格書:ふっ化ナトリウム  (試薬)  和光一級
 
(和光純薬工業株式会社, 2002年8月)
 
試験項目 規格値
外観 白色、結晶性粉末〜粉末
水溶状 試験適合
乾燥減量(150℃) 1.0%以下
酸(HFとして) 0.4%以下
塩基(NaCOとして) 0.5%以下
塩化物(Cl) 0.06%以下
硫酸塩(SO 0.06%以下
重金属(Pbとして) 0.03%以下
鉄(Fe) 0.008%以下
含量 97.0%以上



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※虫歯予防のためのフッ素応用については、そもそも安全性への疑義が指摘されており、本稿はフッ素応用を肯定するものではありません。

 

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