「ハゲに関する広告を集めてみました」


 毛が多いといっては脱毛をすすめ、毛が薄いといってはカツラや薬をすすめ、はたまた白いといっては黒く染め、最近では若い日本人は黒色を脱色して金色、銀色、緑色などに染めたりするのが流行しています。つまり、毛は脱毛屋さん、カツラ屋さん、化粧品屋さんなどさまざまな商売を生み出しているのです。まあ、以後、論理は抜きにして、それらの商売の広告のキャッチフレーズを目についたまま羅列し、ハゲを持つ身(ケを持たない身)で考えてみます。


 「タンマ君」(1829) 東海林さだお作
 『週刊文春』2006年5月25日号より。
 皆が「ハゲタカファンドについて議論していたら、
 突然怒り出したとなりの客。

1.「悲劇の脱毛地獄から脱出」

 ――ある新聞の折り込みちらし。他に、「脱毛と発毛のメカニズムを科学的に解明」「コンピューターで脱毛原因をチェック」――何やら、ハゲは地獄の苦しみで、それを科学とコンピューターが救ってくれそう。髪がフサフサの若い男性が「君の髪を救いたいんだ!」と叫んでいる写真が広告のシンボルになっています。「救ってくれなくていい!」と私は心の中で叫びながらも、広告を詳しく読んだのでした。

2.「不毛地帯に発毛エネルギー」

 ――これは新聞の大きな広告。他に、「毛発場の電位を整え、新毛の成長速度に貢献する」「毛発場を高める5つの育毛条件を東西両医学の叡知に学びました」「オゾン層破壊による有害な紫外線や酸性雨、森林伐採、そして電子機器によるプラスイオンの増加などの生活環境要因が、髪の発育に不可欠な毛発場要因に悪影響を与えているのです。」
 ――そういえば確かに、私の場合、雨粒が直接頭の皮膚にあたります。それは酸性雨が、伐採されたもと森林地帯の地面にふりそそぐのを連想させます。

3.天下の朝日新聞の記事。「飲む毛はえ薬・効果あった!」「FDAは、発毛効果が認められると効果を認めた一方で、精力減退の副作用の恐れも指摘している。」

 ――善良な人々をこのように躊躇させるメリット・デメリットを「二律背反」と言います。できたら製薬会社は「毛が生えて、精力も絶倫になる」というような薬を開発してほしいと思います。だが待てよ、バイアグラと併用という手もあるか……。考えることは、皆同じ。最近、この二つの薬が併用されて、日本の円が米国へ流れて行く、隠れたる原因になっているという秘密情報が、信頼できない某女性週刊誌に掲載されるといううわさがあります。

4.「生えるんです」

 ――昔の使い切りフィルムカメラの宣伝の育毛版。「末期症状の脱毛症もどんどん生えてきています。医学団体にも認められています。日本成人病予防協会推奨」「いろいろ試してみたけれど全部ダメ、絶対に自分の髪以外認めないあなた‥‥そんな方こそぜひご相談下さい!!」「髪が生えなければ返金!の保証制」、そして最後のだめ押しは、広告の裏面の顔写真入りの心強い体験と感謝の手紙。「自分の髪が甦り生きる喜びと希望の日々が復活!」 ――へ〜ハゲ続けている我々には、生きる喜びも希望もないということなのか?このような広告に踊らされず、堂々とハゲ続けましょう!万国の労働者!じゃあなかった。万国の禿頭者(しゅうとうしゃ)諸君!

5.「医療最前線」

 ――スポニチ12月1日の記事より。大きな見出しで「カミバック、自毛だから安心、リサイクル、手術3時間もう抜けない」。自分自身の問題というより、医療最前線の知識は見逃してはならないと、見出しにつられて読んだ訳です。解説している医師によると、マイクログラフト法という植毛術だそうで、後頭部の皮膚を1×12平方センチ切り取って、600から800コに分け、禿げた前頭部に小さな穴を同数開けて埋め込む手術だといいます。毛が前頭部に全然ない人にも有効だそうです。費用は70から80万円だそうです。
 ――そこで考察を。80万円を800カ所で割ると、1ケ所あたり1000円になります。(これは何でも単純な計算をしてみる私のクセです。)では後頭部にも毛がない人はどうすればよいのでしょう。多分、脇の下、あるいは陰部の皮膚を移植することになるのでしょう。そうすると、前頭部からワキガのにおいがしたり、直毛にチジレ毛が混じったりしてしまうのではないのでしょうか。しかしよくいろいろな方法を考えつくものと感心します。まだこんな方法があるのかと、おぼれる人に藁を見せるような、「人生決して希望をすててはダメ」と言われたような気持ちになりました。ただ痛さと時間と金額が気になり、それとフサフサになった自分の晴れ姿とをはかりにかけて、「渡ろうか、渡らぬかの思案橋」です。

6.10月20日は「頭髪の日」

 ――今朝の新聞に1面全体を使った大きな広告が載っていました。10月20日は「頭髪の日」だというのです。トウ(十)とハツ(ハツカ)のゴロを合わせた記念日でしょう。「みんなで理髪店、美容室へ行こう」という日かなと思ったら、養毛剤の宣伝広告なのです。理髪店・美容院の協会が出している広告ではなく、製薬会社の広告なのです。
 このような作り方で記念日を作ったら一年中毎日が記念日になり、そのうち、一日がいくつもの記念日の合併になるでしょう。10を銃として「ジュウハツ」の日で、「銃を発砲する日」の方がまだましだと思います。銃でだれかがうたれても、とにかく頭髪に注目する日が作られるのには反対です。
 あるいは3月20日を散髪の日として、国民全員が散髪する日にしたらどうでしょうか。まてよ、ハゲの人はどうする。ま、いいか、後ろ髪があるから。散髪がいやなら三つ編みにしてもらいましょう。(まじめに考えないで下さいね、皆さん。平成12年10月20日記)

7)抗癌剤の副作用による脱毛を防ぐ新化合物を開発
  英グラクソ・ウエルカム

 ――英グラクソ・ウエルカム(現:グラクソ・スミスクライン)は、抗癌剤の副作用により頭髪などが抜けるのを防止する新化合物を開発したと、米科学誌サイエンス上で発表した。
 多くの抗癌剤は,癌細胞など活発に分裂・増殖する細胞をターゲットとするが、髪の毛など体毛の根元にある毛包の細胞も分裂が盛んなため、抗癌剤の影響をうけて脱毛の原因となる。
 同社では,細胞の分裂を促すCDK2と呼ばれる酵素の働きを妨害する化合物を開発。頭部に塗布することにより毛包細胞の分裂を抑制し、抗癌剤の標的にならないようにして脱毛を防ぐ手法をマウスで試みた。その結果、抗癌剤の種類により33-50%で脱毛防止効果が確認されたという。
 ――(感想) 私は誰かによって抗ガン剤をのまされていた可能性がある。

8)「秋の発毛キャンペーン、髪の悩み何でも相談、40%OFF」(表面)
  「衝撃的な話題を撒いて 決定!発毛日本一」(裏面)

 ――秋のある日の朝、手にした新聞紙にはさまれて入っていた大きな広告チラシ。
 表面にはテレビで見なれた某女優の顔。その下方に多数の頭の写真が並ぶ。すべて治療前と治療後の比較写真である。ダメ押しは「驚異の成功率 96.8%を達成」(これが本当ならハゲの人は日本から96.8%いなくなる!)
 優勝賞金300万円 第1回発毛日本一は○○支社の○○さんに決定!────なぜかチラシには脱毛メカニズムや発毛原理には触れてありません。とにかく、美しい女性プロスタッフが待機していて、チェック、スチーミング、シャンプー、ダイナウェーブ(?)、バイオトーミング(?)など、とにかく全身ストレスを一気に解消してくれるそうです。
 ――(感想) オッ 仙台支社もある!これだけの宣伝で動かない私がバカなのか?先日、友人たちと仙台駅の構内を歩いていたら、突然、若い男性に「私にだけ」名刺のようなものを渡された。ウーンあれは、この会社の社員なのかな。「近くに無料相談室あります」って書いてあったっけ。一緒にいた友人は、「あんた何をもらったの?」って聞いたけど、人に言えない気苦労があるんですよ、我々には。

 


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加藤純二


  

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