大衆をだまして事業を推進するのはよくない:例3
 

 厚生労働省はフッ化物洗口を推進するにあたり、まずガイドラインを各県などに配付し、続いて、詳しい「マニュアル」を配付しました。ガイドラインでは、「このマニュアルにすべて書いてあるので、これに従って事業を行うよう」求めています。そのマニュアルがこの「う蝕予防のためのフッ化物洗口マニュアル」です。

 作成したのは厚生科学研究の助成研究費を受けている「フッ化物応用の総合的研究」班(主任研究者・高江洲義矩先生)で、班の構成は分担研究者と協力研究者、合計24人です。マニュアルの内容は、「フッ化物洗口の意義」、「作用機序とその効果」、「実際」、「Q&A」、「事例」、からなります。

 薬剤で口すすぎをする訳ですから、薬剤の安全性は重要です。口すすぎをした後、少なく見ても約10%が口の中に残り、体内に取り込まれます。洗口液の口腔内残留、誤飲については、マニュアルの「Q&A」の中にあります。

Q5 洗口液を誤って飲み込んだ場合、どうしたらよいでしょうか?
A5 (1)急性中毒
 フッ化物の急性中毒量は、体重あたり2mg/kgとされています(文献1)。
 例えば、園児(体重20kg)が洗口液7ml週5回法(Fとして1.6mg)で洗口を行った場合を考えてみましょう。
 この場合、何人分の洗口液を飲み込めば、急性中毒になるのでしょうか。
計算式:(体重あたり急性中毒量2mg/kg×体重20kg)÷洗口液のフッ化物量1.6mg=25
 よって、一度に25人分を飲み込まない限り、急性中毒の心配はありません。
 また、小学生(体重30kg)が洗口液10ml週1回法(Fとして9mg)でフッ化物洗口を行った場合を考えてみましょう。
計算式:(体重あたり急性中毒量2mg/kg×体重30kg)÷洗口液のFとして9mg=6.7  よって、この場合は、一度に6〜7人分飲み込まない限り、急性中毒の心配はありません。

 まず、急性中毒量の基準になっている2mg/kgには(文献1)が引用されています。それがBaldwin, H.B.の論文です。これを見て、皆さん、何か気付くことはありませんか?・・・それは年号です。なんと1899年の論文です。内容については村上徹先生の分析をお読み下さい。

 安全性を考える上で重要な事柄に、なぜ100年以上前の論文が一つだけなのでしょうか?詳しいことは省略しますが、我々は中毒症状が現れる最小中毒量は、数々の中毒事例から、0.2mg/kgと考えています。また現在、多くの施設では園児に週1回法を行っていますから、

計算式:(体重あたり急性中毒量0.2mg/kg×体重20kg)÷洗口液のフッ化物量9mg=0.44

つまり、洗口液の半分を園児が飲んでしまったら、急性中毒の初期症状が出るということになります。
 中毒の初期症状は吐き気やよだれ、腹痛ですが、胃の中に食べ物があるか、ないか、個人差もあるので、その症状の程度はまちまちでしょう。ともかく100年前の不完全な論文を一つだけ引用して、「何人分飲んでも心配ありません」と強調するのは、大衆をだますものです。それが 年間2千万円以上の研究費を受け取っている研究班の仕事なのですから、いいかげんなものです。この研究班は「税金ドロボー班」とまでは言いませんが、「特異な研究班」です。

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