歯科保健シンポジウム
「フッ素、正しい情報を見分けよう!」
の正しく無い情報について


 昨年末の2003年12月14日、佐賀新聞に下記の記事が掲載されました。「フッ素、正しい情報を見分けよう!」と題した歯科保健シンポジウムの内容などを紹介したものですが、記事の内容に多少気になる点があり、ここで取り上げたいと思います。記事中にアンダーラインを引いた部分や【注】を付した部分がありますが、これは当方で付け足したものです。

■佐賀新聞(2003年12月14日)【企画特集】 

 健康アクション佐賀21(21世紀における県民健康づくり運動)

佐賀県・佐賀県歯科医師会      

 「フッ素、正しい情報を見分けよう!」と題したテーマの歯科保健シンポジウムが11月22日、鳥栖市のサンメッセ鳥栖で開かれました。フッ素によるむし歯予防事業を推進している佐賀県が県歯科医師会等後援で開いたもので、フッ素の有効性や安全性について正確な情報を見分ける必要性について、歯科医師ら4人のシンポジストがそれぞれの立場から報告しました。
 県内の3歳児の1人平均むし歯数は現在全国ワースト3。過去には10年連続ワースト1だったこともあり、佐賀県は平成11年度から市町村に財政的支援を行い、フッ素塗布やフッ素洗口(うがい)による予防事業に取り組んでいます。シンポジウムではこうした取り組み状況や、具体的な成果などについても報告があり、約350人の参加者も熱心に耳を傾けていました。

シンポジウム
フッ素、正しい情報を見分けよう!

境  脩さん:福岡歯科大学名誉教授
田辺 功さん:朝日新聞東京本社編集委員
永家 昇さん:鳥栖小PTA会長
仲井宏充さん:鳥栖保建所長
 
コーディネーター
近藤 英紀さん:三養基・鳥栖地区歯科医師会長
 
近藤  今日のシンポジウムのテーマは「フッ素正しい情報を見分けよう!」ですが、近年、情報は氾濫していて、正しい情報を見分けるのは非常に難しい状況にあります。フッ素についても同様です。まず佐賀県のフッ素によるむし歯予防対策についてこれまでの経過を話してください。
仲井  佐賀県では平成11年度から市町村にフッ素洗口の技術的支援と補助金の交付を行っています。平成14年度からは小学校でのフッ素洗口も助成の対象としたので、フッ素洗口は増加しています。なぜ佐賀県がむし歯予防に尽力するかというと、3歳児のむし歯が、長年全国最悪で、現在は、ワースト3。3月まで唐津にいたのですが、フッ素を使うことでかなりの効果がありました。佐賀県では、フッ素の効果と、安全性に確信を持って進めています。現在日本でむし歯は減る傾向ですが、これは、フッ素含有の歯磨剤が増えているためです。佐賀県では、県教育委員会と一緒にフッ素をより有効に使いたいと考えています。
近藤  平成15年度より、鳥栖小学校でフッ素洗口が始まりました。保護者の立場からの意見をお願いします。
永家  フッ素洗口は、すでに鳥栖小校区のほとんどの幼稚園、保育園で行われており、保護者からの要望により、鳥栖小学校でもPTAで勉強会を重ね導入していただきました。フッ素に対する様々な情報がありましたが、学校医、学校歯科医、学校薬剤師、保健所の先生方の説明により、フッ素洗口の安全性を理解のうえ行っております。5月の連休明けより実施し、保護者の皆さんには、フッ素洗口ボランティアという形で協力してもらっています。水でうがいの練習をしてからフッ素洗口を実施していますし、保護者が希望しない場合には強制はしていません。現在、平成16年度の実施に向けて他の小学絞からも見学にこられています。保護者のボランティアの皆さんも和気あいあいとやっていますし、実際やってみると、そんなに難しいことではなかったかなと思っています。
近藤  私は、ある小学校でフッ素洗口の説明会を担当しましたが、当日小学校の入り口で、フッ素に関する誤った内容のちらしが保護者に配られました。今スクリーンでお見せします。これについてご意見を。【→注1】
 ここに、WHOのテクニカルレポートに、6歳未満の子供はフッ素洗口しないほうがいいという一文があります。ただしこれは全体の文章のほんの一部を取り上げて言ったものです。水道水フッ素化がアメリカでは65%行われているため、フッ素洗口した場合にその水を全部飲んでしまっては多すぎると言っているのです。日本では、水道水のフッ素化は行われていないので、問題はありません。【→注1】
近藤  WHOは最も信頼できる機関ですが、一部抜粋という方法で、情報が誤って伝えられています。こういう方法はどうなのでしょうか?
田辺  フッ素の反対をするにしても、本当の事というものはあるわけだから、正確な情報を伝えて欲しいものですね。研究者の中には、味方を守るため、文章やデータを都合良く使うという人もいます。正しくないことだと思います。
近藤  公衆衛生というのは、みんなの健康を守るということだと思いますが。
 水道水には消毒のため塩素が入っていますが、これをもし止めて一人一人が湯冷ましにして使うとすると、大変なエネルギーがかかります。だから、公衆衛生の考え方から塩素を入れる。これらの話と水道にフッ素を入れる話、全く同じ考え方です。【→注2】
近藤  先程のちらしは、配った方がインターネットで調べた、ということですが、実際にここでインターネットにつないでみましょう。スクリーンのパソコン画面をご覧下さい。「フッ素」とか「フッ素洗口」で検索すると何千件とヒットします。この「フッ素研究をクリックして下さい。トップページには、いろいろサイトが出ていますが、どなたか開きたいところはありますか(会場から「薬害オンブズパーソン」の声)では、そこをクリックしてください。
田辺  薬害オンブズパーソン会議は真面目な団体ですが、フッ素の発がん性は世界的には認められていません。発がん性があると書いたアメリカの先生がいますが、否定する論文が多数あります。ここでは、それらを載せていないというだけ。中毒の危険性は、頻繁に起こるならば、長い期間フッ素洗口をしている新潟県で起こっていてもおかしくありません。
 2001年に中国で8000人以上を対象とした、フッ素と骨折頻度に関するNlH(米国国立衛生研究所)がサポートした論文があります。フッ素1ppm のところで一番骨折が少なくなっています。フッ素が多くても骨折が増えるし、少なくても骨折は増えます。歯が丈夫になるということは骨が丈夫になるというのも当たり前なんです。海水中のフッ素は 1.3 ppm です。これは6億年前からほとんど変わっていないというデータがあります。その中で魚が骨を作り、歯を作り進化してきたわけです。海の中の 1.3 ppm とニューヨークで水道に含まれる1ppm は偶然の一致でしょうか、こういう質問を皆さんに投げかけてみたいと思います。6億年かけて我々の祖先はずっとフッ素1ppm 前後の中で進化し続けてきたんです。【→注3】
近藤  情報が氾濫するなか、フッ素に関しては一部の誤った情報に戸惑う人も多いのではと思います。きょうのシンポジストの皆さんの説明で、その背景が理解できたのではないでしょうか。
 
記事中に掲載されている佐賀県杵島郡有明町立有明西小学校のデータ。「有明西小学校では、平成4年からフッ素洗口を実施しています。1人平均むし歯数は、約半分になりました。」とある。
この佐賀県杵島郡有明町立有明西小学校のデータはシンポジウム記事に添えて掲載されています。【→注4】で取り上げます。



【注1】について

 ここに、WHOのテクニカルレポートに、6歳未満の子供はフッ素洗口しないほうがいいという一文があります。ただしこれは全体の文章のほんの一部を取り上げて言ったものです。水道水フッ素化がアメリカでは65%行われているため、フッ素洗口した場合にその水を全部飲んでしまっては多すぎると言っているのです。日本では、水道水のフッ素化は行われていないので、問題はありません。

 まず、WHOのテクニカルレポートに「6歳未満の子供はフッ素洗口しないほうがいいという一文があります」についてですが、正確には、テクニカルレポートの第12章「フッ化物の局所応用」の「結論(Conclusions)」で「フッ化物洗口は6歳未満の子供には禁忌である。(Fluoride mouth-rinsing is contraindicated in children under 6 years of age.)」と書かれています。「しないほうがいい」という許容的な表現ではありません。
 この「フッ化物洗口は6歳未満に禁忌」について「水道水フッ素化がアメリカでは65%行われているため、フッ素洗口した場合にその水を全部飲んでしまっては多すぎると言っているのです」と解説されていますが、このようなことがWHOのテクニカルレポートの何処に書いてあるのでしょうか?

下記英文の非公式訳
 
 学校におけるフッ化物洗口プログラムは齲蝕活動性が中等度から重度である、フッ化物摂取の少ないコミュニティにおいて推奨される。最適な濃度に調整されたフッ素化水道水を持つコミュニティにおいては、学校におけるフッ化物洗口は推奨されない。もしその製剤(洗口剤)が規定された、あるいは通常の量で使用されるならば、急性中毒発現の危険性はほとんど無いか全く無い。正しい洗口を行えば,フッ化物の最小量のみが残留し、飲み込まれる。残留する量は未就学の子供において歯のフッ素症の原因にはならないが、毎日摂取されるフッ化物の全体の量によっては歯のフッ素症のリスクに寄与するかもしれない。ゆえに、フッ化物洗口は6歳未満の子供には推奨されない。
 
WHO Technical Report Series 846 の「12.5 Fluoride mouth-rinsing」より
 
School-based fluoride mouth-rinsing programmes are recommended in low-fluoride communities where caries activity is moderate to high. In optimally fluoridated communities, school-based fluoride mouth-rinsing programmes are not recommended. There is little or no danger of acute toxic reactions if the products are used in the prescribed or usual quantities. Following correct rinsing, only a minimum amount of fluoride is retained and swallowed. Though the amount retained would not cause fluorosis in a preschool child, it might contribute to the risk of fluorosis depending upon the total amount of fluoride being ingested daily. Therefore, mouth-rinses are not recommended for children below the age of 6 years.
 上記を読めば分かる通り、洗口後に洗口液を吐き出しますが、少量が口腔内に残留し、飲み込まれてしまい、この量は「未就学の子供において歯のフッ素症の原因にはならないが、毎日摂取されるフッ化物の全体の量によっては歯のフッ素症のリスクに寄与するかもしれない」ので、「フッ化物洗口は6歳未満の子供には推奨されない」とし、「12.6 Conclusions(12.6 結論)」で「フッ化物洗口は6歳未満の子供には禁忌である」としているのです。
 
 6歳未満では永久歯が形成途上であるため、過量のフッ化物を摂取すると歯のフッ素症になる危険性があります。「フッ素洗口した場合にその水を全部飲んでしまっては多すぎると言っているのです」とありますが、洗口液全量を飲み込む場合どころか、洗口によって口腔内に残留し、飲み込まれる少量の洗口液にすら「毎日摂取されるフッ化物の全体の量によっては歯のフッ素症のリスクに寄与するかもしれない」としているのです。これは、たとえ水道水をフッ素化していない地域であっても、フッ化物洗口によって飲み込まれるフッ化物は「リスク」を高める方向に働くということです。フッ化物の総摂取量が低いところでは、大したリスクとはならないでしょうが、水道水以外の、例えば日常の飲食物から多くのフッ化物を摂取し、総摂取量が既に多い場合には、「歯のフッ素症」を発生させるレベルに近いところの「リスク」となる可能性があります。
 
 また「日本では、水道水のフッ素化は行われていないので、問題はありません」とありますが、このテクニカルレポートは水道水をフッ素化している地域を前提にしている訳ではありませんので、それを理由に日本の6歳未満の子供にフッ化物洗口させることが「問題はありません」ということは、少なくともテクニカルレポートからは読みとれません。そもそも、テクニカルレポートでは、水道水をフッ素化している地域ではフッ化物洗口を推奨していないのです。ゆえに、むしろフッ化物洗口は水道水をフッ素化していない地域を前提としているのです。フッ化物の総摂取量こそが問題で、日本人の食生活によって摂取されるフッ化物の総量が欧米に比べて多いことが報告されていることから、単に水道水のフッ素化が行われていないことを以て「問題はありません」というのは早計であると思われます。


【注2】について

 水道水には消毒のため塩素が入っていますが、これをもし止めて一人一人が湯冷ましにして使うとすると、大変なエネルギーがかかります。だから、公衆衛生の考え方から塩素を入れる。これらの話と水道にフッ素を入れる話、全く同じ考え方です。

 水道水に消毒のために塩素が添加されていますが、これは公衆衛生の観点から広く認められています。しかし、水道水にフッ素(フッ化物)を添加することが、塩素を添加することと同じかは、議論のあるところです。
 平成12年11月、新聞各紙で「厚生省が水道水へのフッ素添加を容認した」と伝えられたことについて、厚生省(現、厚生労働省)水道整備課や、自治労連公営企業評議会は下記の見解や見解(案)を発表しています。

厚生省(厚生労働省)水道整備課の見解
 
1.  水道行政の目的は清浄な(人の健康を害しない)水の供給であることから、フッ素添加(添加後の濃度が 0.8 mg/L 以下であることが必要)により虫歯を防止する場合には、水道利用者の理解を得て実施されるべきと思料。
2. なお、水道行政の観点からは、

(1)  水道行政の目的は清浄な水の供給であり、また水道水は不特定多数の国民により多目的に使用されるという性格を持っていることから、浄水処理のための凝集剤や消毒のための塩素等を除いては基本的に薬品を添加すべきではない、

(2)  フッ素濃度を一定の値(虫歯が予防でき班状歯を生じない濃度)に維持管理するための運営技術上の問題がある、と考えており、フッ素添加を積極的に推進する立場にはない。


水道水への「フッ素添加」問題に対する見解(案)

2000年12月8日 自治労連公営企業評議会    

 T.はじめに
 
 厚生省が11月17日に、水道水へのフッ素添加を容認する見解を発表し、虫歯予防や水の安全性をめぐり議論と関心が高まっています。
 
 私たち公企評は、水道水の「生産と供給」に従事し、「命の水」を守る労働者として、(1)水はすべての生物の源であり、(2)かけがえのない地球環境を守りながら、(3)人類の使用する水道水は限りなく自然水に近い供給をめざしています。
 
 この見地から、水道水へのフッ素添加には基本的に反対を表明するものですが、地域住民の理解と合意をめざす立場から「公企評の見解」を明らかにするものです。

 U.「フッ素添加」問題をめぐる動向
 

(1)  フッ素は自然界に存在し、海藻や魚、お茶などにも含まれ、虫歯予防の効果(酸の浸食を防ぐ性質)があることは20世紀初めから知られていました。
 米国では1945年から虫歯予防のため水道水に添加され、世界保健機関(WHO)は69年に「水道水へのフッ素利用の推進」を決議し、現在38カ国で添加されているといわれています。
(2)  日本では、1951年から京都市山科地区などで試験的に水道水フッ素化が行われていました。しかし、50年代から70年代にかけて「高濃度のフツ素を含んだ水道水が原因で斑状歯(歯が白濁するなど変色)になった」として兵庫県宝塚市の住民が訴訟(71年)を起こすなど問題が表面化しました。WHO決議に日本も賛同しましたが、この事件を契機にフッ素利用は、歯磨き粉や歯面への塗布、添加水でのうがい等を中心に進められてきました。
(3)  昨年末、日本歯科医学会が「虫歯予防のためフツ素利用を推奨する」との見解をまとめ、厚生省が今夏、沖縄県具志川村からの要望を受け「水質基準以下での容認」との見解を表明したことで再びクローズアップされてきたものです。
(4)  厚生省の見解は、水道水質基準(0.8ppm以下)の厳守を統一見解にしていますが、歯科保険を管轄する健康政策局は推進の方向であるのに対し、水道行政を管轄する生活衛生局では「望ましくない」と否定的態度をとっています。このため、「相談があれば技術的に支援する」が「積極的に自治体に勧めるわけではない」(津島厚相)と自治体任せの曖昧な態度をとっています。日本水道協会は「人為的添加の必要性は認められない」(75年10月)としています。
 
 推奨する人たちは、一部の学者や医師、議員ですが、その論旨は@0.5〜1ppm前後の水を毎日飲み続けると、虫歯を4〜5割減らせる、A海外の疫学調査で効果や安全性の評価は定着している、B簡便で安全、公平で費用が安い虫歯予防というものです。いくつかの自治体や議会で決議しているところもあります。
 
 これに対し、反対の意見は、@発ガン性などの懸念があり安全性は未確立、A日本の食生活からフツ素の摂取量が多く、重複使用による疫学的調査は行われていない、B子供の虫歯は減少しているなどというものです。反対運動もねばり強く取り組まれ、74年には新潟大学歯学部予防歯科などによる県議会や市長への「水道水添加」の働きかけに対し、食生活改善普及会や市民団体による反対署名運動が展開され、新潟水労も「見解表明」するなど積極的な役割を果たしてきています。81年には「日本フツ素研究会」が設立され、医学・歯学からの探求もされて「疑わしきは使用せず」の声を上げています。今回の「厚生省見解」に対しても、日本主婦連合会などが反対の行動を起こしています。

 V.水道の性格と任務
 
 第1に、水道は「命の水」として、人間生活に必要不可欠のものであり、他に代替できるものはなく、地域住民に安全で清浄な水の供給を保障するものです。
 
 第2に、水道の目的は、公平な供給をはかり「もって、公衆衛生の向上と生活環境の改善とに寄与」するものです。
 
 第3に、水道は給配水管を通じて、多数の使用者に一様に供給するものであり、個別の選択が不可能なものです。
 
 第4に、水道の経営原則は、経済性と効率性を発揮し、公営企業として独立採算制であることです。

 W.「フッ素添加」の問題点
 

 第1に、水道の持つ特性と果たすべき使命から、「フツ素添加」はすべきではないと考えます。
 
   @ 水道は、人間が生きるための水の供給と、伝染病の予防など「公衆衛生」の維持・向上を原点にしています。虫歯予防やビタミン注入など健康増進は本来の目的ではありません。従って、薬品注入は消毒のための塩素など必要最小限とすべきです。

A しかも、虫歯予防などは他に代替措置が検討されますが、水道には他に代替できるものがありません。

B 水は地球に生存する生物の共有財産です。水道水への薬品注入などは必要最小限にし、限りなくシンプルで自然水に近い供給を理想とすべきです。今日、自民党政治と大企業による利潤第一主義の経済活動は「環境ホルモン」などさまざまな環境問題を起こしています。「自然水に近い供給」は、かけがえのない地球環境を守る課題とも深く結びついています。
 
 第2に、安全性について問題が解決していないことです。
 
 @斑状歯や骨硬化症、A発ガン性や腎臓病患者への影響、B地域による日常生活におけるフツ素摂取量の差異、C他の化学物質との複合汚染など疑念や危険性、が指摘されています。学者や医師・歯科医師の間でも意見の対立があります。「疑わしきは使用せず」です。
 
 第3に、水道水の公平な供給に反することです。
 
 水道はすべての受水者に一様に供給されます。価値観など多様化の時代に「フツ素添加」を好まない人に添加水道水を強制する権利は何人にもありません。
 
 第4に、経済性と効率性に著しく反することです。
 
 水道水の用途は多様であり、人体に摂取(飲食)する量はわずか1%で、他の用途(洗濯、風呂、水洗トイレ、掃除、洗車など)が大部分です。フツ素添加は人体に摂取されてこそ効果があるわけですから、99%は無駄に流されることになります。公営企業は独立採算性が原則ですから、その分、水道料金に転嫁されることになってしまいます。仮に、東京都では薬品費だけで年間5億円程度(東水労試算)といわれています。
 
 第5に、技術的にも困難であることです。
 
 フッ素添加の効果は0.5ppm以上といわれていますから「0.5〜0.8ppm(水質基準)」を保持し、全地域に24時間安定して送水することは困難です。ある時間ある地域に濃度の高い添加水を送水したら事件です。設備と人員など万全な体制には大きな費用負担となります。

 X.「命の水」をまもる国民的合意を
 
 「フッ素添加」問題は、これまで限られた地域での問題として扱われてきましたが、日本歯科医学会や厚生省の「見解」が出されて全国的に関心と注目を集めてきています。
 
 水道行政は、「自治体固有の事務」としてあります。「フツ素添加」問題についても、住民自治の立場から、安全性や費用負担などを含め、住民合意を基本とすべきです。
 
 水道法第1条では、「清浄にして豊富低廉な水の供給」を宣言しています。しかし、今日の社会情勢と私たちの生活環境は、水道をめぐっても、自然環境の破壊や水質汚濁、災害対策や繰り返される水道料金値上げと「料金格差」問題など、さまざまな問題を引き起こしています。
 
 公企評は前述した見解を表明するものですが、今回の「フツ素添加」問題と結合させて、水道そのもののあり方について、全国の公企労働者、地域住民や学者・市民団体、地方議会などで、相互理解と合意づくりの討論を呼びかけるものです。


 水道水に塩素を添加することと、フッ素(フッ化物)を添加することが同じと言えるのか、前掲の文書でも分かる通り、異論があります。


【注3】について

 2001年に中国で8000人以上を対象とした、フッ素と骨折頻度に関するNlH(米国国立衛生研究所)がサポートした論文があります。フッ素1ppm のところで一番骨折が少なくなっています。フッ素が多くても骨折が増えるし、少なくても骨折は増えます。歯が丈夫になるということは骨が丈夫になるというのも当たり前なんです。海水中のフッ素は 1.3 ppm です。これは6億年前からほとんど変わっていないというデータがあります。その中で魚が骨を作り、歯を作り進化してきたわけです。海の中の 1.3 ppm とニューヨークで水道に含まれる1ppm は偶然の一致でしょうか、こういう質問を皆さんに投げかけてみたいと思います。6億年かけて我々の祖先はずっとフッ素1ppm 前後の中で進化し続けてきたんです。

 もっともらしい話ですが、やはり「おかしい」と思わざるを得ません。
 
 まず、人類の遠い祖先が海に起源を持つとしても、現在も人類が魚類と共に海水中でエラ呼吸している訳ではありません。我々人類の遠い祖先(人類が進化上起源を持つ原始的な生物)が海水中にいた頃の海水環境中にフッ素が 1.3 ppm あったとしても、現在の我々に同じ環境条件が必要かどうかは科学的に検討が必要でしょう。
 
 「海水中のフッ素は 1.3 ppm で‥‥これは6億年前からほとんど変わっていないというデータがあり‥‥6億年かけて我々の祖先はずっとフッ素1ppm 前後の中で進化し続けてきたんです」と聞くと、海水が何か素晴らしく感じられますが、この海水には塩分が 3.5%前後の濃度で含まれており、人類の遠い祖先が同じ塩分濃度の海水中にいたかは定かではありませんが、この海水をその子孫たる我々が摂取し過ぎると健康を害します。人間の血液中の塩分濃度は 0.9%程です。海水は我々人類にとっては、魚類とは違い、生きる環境としては、もはや適切とは言えません。境先生のこの話を「こじつけ」と言うつもりはありませんが、少々無理があるのではないでしょうか?
 
 フロリデーション(むし歯予防のために水道水のフッ化物濃度を1ppm 程度に調整すること)と海水中のフッ素イオン濃度が同程度であることから、「海の中の 1.3 ppm とニューヨークで水道に含まれる1ppm は偶然の一致でしょうか」とは、フッ化物応用の専門家の発言として首を傾げたくなります。この1ppm の濃度について中国におけるフッ素と骨折頻度に関する論文から「フッ素1ppm のところで一番骨折が少なくなっています」と宣伝するならば、イギリスのヨーク大学のシステマティックレヴュー(A Systematic Review of Public Water Fluoridation, NHS Centre for Reviews and Dissemination, University of York, 2000)で、同じ1ppm のフロリデーションによって歯のフッ素症の発生は48%になると推定され、審美的に問題となる歯のフッ素症も12.5%になると推定されていることも宣伝?すべきでしょう。


【注4】について

記事中に掲載されている佐賀県杵島郡有明町立有明西小学校のデータ。「有明西小学校では、平成4年からフッ素洗口を実施しています。1人平均むし歯数は、約半分になりました。」とある。

 この佐賀県杵島郡有明町立有明西小学校のデータはシンポジウム記事に添えて掲載されています。
 「有明西小学校では、平成4年からフッ素洗口を実施しています。1人平均むし歯数は、約半分になりました。」とあり、大きな効果があるとの印象を受けますが、下記のデータも併せてご覧下さい。

データ 有明西小:6年生
(11〜12歳)
学校保健統計調査:12歳児
(文科省の全国データ)
比較データ 4.19(平成4年)

2.11(平成14年)
4.17(平成4年)

2.28(平成14年)
4.09(平成5年)

2.09(平成15年)
10年後の結果 50.4%に減少 54.7%に減少 51.1%に減少

 検診時の年齢や検診の時期等が異なる事が推測されるので、有明西小学校の6年生と12歳児の全国データを単純に比較することは出来ませんが、フッ化物洗口を実施してきた有明西小学校の6年生の1人平均むし歯数が10年間で 50.4%に減少したとしても、同じ10年間にフッ化物洗口実施者の割合が非常に低い12歳児の全国データでも 54.7%に減少しているのです。1年後の平成15年の学校保健統計調査(全国データ)によれば12歳児の1人平均むし歯数は、平成5年に比べて(つまり、10年間で)51.1%に減少しています。
 
 有明西小学校の6年生をフッ化物洗口実施前後の10年間で比較して「半減した」といっても、同じ時期にフッ化物洗口実施者の割合が非常に低い12歳児の全国データでも「半減」しているのです。
 
 ここで、この上記のデータから、有明西小の減少率がフッ化物洗口実施者の割合が非常に低い12歳児の全国データとほぼ同じであることから、「フッ化物洗口に効果が無いのでは」と言うつもりはありません。「全国データ」の「減少率」は、「減少率の大きいところ(都道府県)」と「小さいところ」があって、あくまで平均値的な「全国」の減少率ですので、厳密には、有明西小がフッ化物洗口を実施せずに同じように10年間で比較したら、半減せずに、より緩い減少率となって、その分がフッ化物洗口の効果としてデータ上に表れたかも知れないからです。
 
 ここで強調しておきたいのは、掲載されている有明西小のデータから受ける印象、つまり「フッ化物洗口の効果」によって「むし歯が半減する」という過大な期待を持つような、単純な理解をしてはならないということです。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 最後に、このシンポジウムでシンポジストとなっている朝日新聞東京本社編集委員の田辺功氏についてですが、彼はフッ化物の使用を推進している催し物に頻繁に登場する言論人です。
 
 彼は「フッ素の反対をするにしても、本当の事というものはあるわけだから、正確な情報を伝えて欲しいものですね。研究者の中には、味方を守るため、文章やデータを都合良く使うという人もいます。正しくないことだと思います。」と述べておられますが、「フッ素の反対をするにしても」という部分はともかく、私たちも「正確な情報を伝える」ことに大賛成で、「研究者の中には、味方を守るため、文章やデータを都合良く使うという人もいます」と言われることについても、私たちも同じように「正しくないこと」だと思います。
 
 これまで、推進派の学者らは、フロリデーション(水道水のフッ素化)については「世界の61カ国」で実施されている「世界の常識」などと宣伝してきましたが、私たちは本当に常識か疑問を提起してきました。また、フッ化物洗口についても、フッ化ナトリウム溶液の誤飲によって発生が懸念される急性中毒に関して、歯科界で支持されているとされる体重あたりのフッ素としての急性中毒量2mg/kg 説に科学的根拠があるのかとか、「試薬」の使用の問題などについて問題提起してきました。さらに、推進派がフッ化物が必須栄養素であると宣伝していることについても必須栄養素と言えるのか疑問を提起し、他に、推進派の学者らによるWHO(世界保健機関)のテクニカルレポートの誤訳問題など 、数々の問題を提起してきました。
 
 新聞というマスメディアに籍を置く言論人として、田辺氏は何が真実であるか、何が正確な情報か、このフッ化物応用の問題について、しっかり取材されたのでしょうか?例えば、フッ素としての体重あたりの急性中毒量は、前世紀1899年のたった1人の体験的報告(しかも体重すら記載がない)に拠って、それを推進派の学者らは科学的根拠などとし、「安全性に問題は無い」としてフッ化物洗口を4歳児の幼児から行うよう推奨しています。このようなことが21世紀に入った今でも許されて良いものでしょうか?死亡や重篤な症状が発生しないことで表面化しにくく、薬害や医療過誤事件として大きな問題とはならないでしょうが、医学の世界にあって、基本的な構造は薬害発生の構造と似ていると思います。推進している学者らはともかく、ジャーナリストとして一緒になってフッ素使用を推進しているのは、いかがなものかと思います。田辺功氏の見解は個人のもので、朝日新聞の会社として見解と同一では無いのかもしれませんが、新聞社の編集委員という肩書きで発言している以上、新聞社としての責任や信用問題にも関わってくると思います。いつも同じマスコミ人によって同じようにフッ化物応用問題が取り上げられるよりも、朝日新聞も時には他の人に取材させてみてはいかがでしょうか?田辺氏とは違う検証取材ができるかもしれません。

 

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